WebMCPが注目されている背景
2025年後半から、AIエージェントをブラウザに統合する動きが急速に進んでいます。MicrosoftとGoogleが共同で「WebMCP(Web Model Context Protocol)」という新しいWeb標準を提案したことで、開発者コミュニティがざわついているんですよね。
これまでAIエージェントがWebアプリと連携するには、バックエンド側にAPIを用意する必要がありました。しかしWebMCPは、フロントエンドのJavaScriptだけでAIエージェントに「ツール」を提供できる仕組みなんです。つまり、サーバー側の変更なしにAIエージェントとWebアプリを繋げられるようになります。
WebMCPの基本的な仕組み
WebMCPのコンセプトはシンプルです。Webページ自体をModel Context Protocol(MCP)サーバーとして機能させるという発想ですね。ただし、従来のMCPサーバーがバックエンドで動作するのに対して、WebMCPはクライアントサイドのスクリプトでツールを実装します。
具体的には、Web開発者がJavaScript関数を「ツール」として定義し、自然言語の説明とスキーマを付与します。ブラウザ内蔵のAIエージェントや拡張機能がこれらのツールを発見・実行できるようになる、という仕組みです。
WebMCPのツール定義例
たとえば、ECサイトで「カートに商品を追加する」ツールを定義するケースを考えてみましょう。開発者はJavaScriptで関数を書き、入力パラメータのスキーマと説明文を添えるだけです。AIエージェントはこの情報を読み取って、ユーザーの指示に応じてツールを呼び出せるようになります。
既存のDOM操作やスクリーンスクレイピングとは根本的に異なるアプローチで、開発者が意図的に公開したAPIだけをAIが利用するという点が大きな特徴ですね。
MCPサーバーとWebMCPの違い
以前MCPサーバー開発入門で紹介したModel Context Protocolは、バックエンドサーバーとして動作するものでした。一方、WebMCPにはいくつかの重要な違いがあります。
- 実行環境: MCPサーバーはNode.js等のバックエンドで動作。WebMCPはブラウザ内のJavaScriptで動作
- セットアップ: MCPサーバーは独立したプロセスとして起動が必要。WebMCPはWebページを開くだけ
- ユーザーコンテキスト: WebMCPはブラウザのセッション情報(ログイン状態など)をそのまま活用できる
- リアルタイム性: WebMCPはページの現在の状態を直接参照するため、常に最新の情報でツールが動作する
つまり、サーバーサイドのAIエージェントハーネスとは補完関係にあるんですよね。バックエンドの重い処理はMCPサーバー、フロントエンドのUI操作はWebMCPという使い分けが見えてきます。
MicrosoftとGoogleが共同提案した理由
WebMCPの提案リポジトリを見ると、Microsoft EdgeチームとGoogle Chromeチームのエンジニアが名前を連ねています。ブラウザベンダー2社が協力しているのは珍しいことです。
背景にはAIエージェントの急速な進化があると思われます。ChatGPTやClaudeなどのAIプラットフォームがWebブラウジング機能を強化する中、ブラウザ側が標準化されたインターフェースを用意しないと、各AIプラットフォームが独自の方法でWebページを操作する混乱が起きかねません。
Google Antigravity IDEのようなエージェントファーストの開発環境が登場している流れとも一致します。Webの次のレイヤーとして、AIエージェントとの対話が標準化されようとしているわけですね。
WebMCPが解決する課題
現状のAIエージェントがWebページを操作する方法には、大きく分けて3つの問題があります。
まず、スクリーンスクレイピングの脆弱さです。CSSクラス名やDOM構造が変わるたびにAIの操作が壊れてしまいます。次に、セキュリティリスクとして、AIがページ上の全要素にアクセスできてしまう問題があります。そして、意図しない操作が発生する可能性もありました。
WebMCPはこれらを根本的に解決しようとしています。開発者が明示的に公開したツールだけがAIに利用可能になり、スキーマで入出力が厳密に定義されるため、予期せぬ動作が起きにくくなります。
開発者にとっての影響と実装の見通し
WebMCPはまだ提案段階なので、すぐに使えるわけではないです。ただし、Interop 2026のようなブラウザ互換性プロジェクトの流れを見ると、標準化が進めば比較的早い段階で主要ブラウザに実装される可能性がありそうです。
Web開発者としては、今のうちにMCPの基本概念を理解しておくのが良いかもしれません。WebMCPが実装されたとき、自分のWebアプリにツールを追加するだけでAIエージェント対応が完了する、というのは魅力的な話です。
一方で、LLMエージェントのコスト問題が解決されない限り、ブラウザ内AIエージェントが本当に普及するかは不透明な部分もあります。ツールの呼び出し回数が増えるほどコストが膨らむ構造は、WebMCPでも変わりません。
まとめ:Webの次の進化はAIとの対話
WebMCPは、Webページを「AIエージェントが理解できるインターフェース」に変える提案です。MicrosoftとGoogleが共同で推進していることからも、この方向性は今後のWeb標準に大きな影響を与えそうですね。
まだ提案段階ではありますが、MCPの概念自体はすでに多くのAIツールで採用されています。Webフロントエンド開発者にとっては、バックエンドAPIを書かなくてもAIエージェント連携ができるようになるという点で、かなりインパクトのある技術だと感じました。
