Gwtarが生まれた背景
Webページを保存したいと思ったことはありませんか?ブラウザの「名前を付けて保存」を使っても、HTMLファイルと画像フォルダがバラバラになって管理が面倒になりがちです。
この問題に正面から取り組んだのが、AI研究者・ブロガーとして知られるGwern Branwen氏です。彼が開発したGwtarは、HTML・CSS・画像・フォントなどをすべて1つのHTMLファイルに効率的にパッケージングするフォーマットです。
しかも、ただBase64で埋め込むような力業ではありません。独自の圧縮・展開メカニズムを使って、ファイルサイズを抑えながら単一ファイル化を実現しているのが特徴ですね。
Gwtarの技術的な仕組み
Gwtarの名前は「Gwern + tar」に由来しています。UNIX系のtarコマンドのように、複数のファイルをまとめるというコンセプトです。
従来のMHTML(MIME HTML)やSingle File Web Pageとは異なり、Gwtarには以下の工夫が施されています。
- 圧縮効率:リソースをDeflate圧縮してからBase64エンコードし、JavaScriptで展開
- 遅延読み込み:ページの初期表示に必要なリソースを優先し、残りは非同期で展開
- 自己完結性:外部CDNやAPIへの依存がゼロ。オフラインでも完全に動作
- メタデータ保持:元のURL、取得日時、MIMEタイプなどを構造化して保存
つまり、「tarアーカイブをHTMLに埋め込んで、ブラウザが自力で展開する」という発想です。シンプルですが、実用性は非常に高いでしょう。
既存フォーマットとの比較
Webページの保存フォーマットにはいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
MHTMLは、MIMEエンコーディングで複数リソースを1ファイルにまとめる形式です。ただし、ブラウザのサポートが不安定で、Chromeは一時期廃止を検討していました。また、圧縮効率もあまりよくありません。
WARC(Web ARChive)は、Internet Archiveが使用するフォーマットです。大規模アーカイブには適していますが、ブラウザで直接開けないのが難点ですね。
一方、Gwtarはブラウザで直接開けて、圧縮効率も高く、JavaScriptさえ有効ならどの環境でも動作します。Flashpoint ArchiveのようなWebコンテンツ保存プロジェクトにとっても、参考になるアプローチではないでしょうか。
Gwtarの実用シーン
「で、これ何に使えるの?」と思った方もいるでしょう。いくつかの具体的なユースケースを紹介します。
1. 技術ドキュメントの配布
社内の技術資料やマニュアルを、サーバーなしで配布したいケースは多いはずです。Gwtarなら1つのHTMLファイルをメールやSlackで送るだけ。画像やCSS込みで完全に再現されます。
2. オフライン閲覧用の記事保存
飛行機の中や通信環境の悪い場所で読みたい記事を事前に保存しておく用途にも最適です。従来のPDF変換だとレイアウトが崩れがちですが、Gwtarなら元のWebページとほぼ同じ見た目で閲覧できます。
3. デジタルアーカイブ
Internet Archiveがアクセス制限に直面している今、個人レベルでのWebアーカイブの重要性が増しています。Gwtarは長期保存に適したフォーマットとして有望ですね。
Gwern氏のこだわりが見える設計思想
Gwern氏のサイト(gwern.net)を訪れたことがある方はわかると思いますが、彼のWebデザインへのこだわりは並外れています。ページ読み込み速度、タイポグラフィ、アクセシビリティ——すべてが極限まで最適化されているのです。
Gwtarにもその思想が色濃く反映されています。たとえば、展開時のチラつきを防ぐためにCritical CSSを最優先で読み込む仕組みや、プログレスバーでユーザーに展開状況を伝えるUX設計など。
「技術的に可能」なだけでなく「ユーザー体験として優れている」ことを追求する姿勢は、モダンCSSの進化にも通じるものがあります。
Gwtarの課題と今後
もちろん、完璧なフォーマットというわけではありません。いくつかの課題も挙げておきましょう。
まず、JavaScriptが必須という点。JavaScript無効の環境ではリソースが展開されないため、表示できません。セキュリティポリシーが厳しい環境では制約になる可能性があります。
次に、動的コンテンツの扱い。APIから取得するデータや、ユーザーインタラクションに依存するコンテンツは保存できません。あくまで静的なWebページ向けのフォーマットです。
とはいえ、Gwern氏のプロジェクトは着実にアップデートされており、コミュニティからのフィードバックも反映されています。今後、W3Cのような標準化団体が注目する可能性も十分にあるでしょう。
自分で試してみるには
Gwtarを試すのは簡単です。公式ページにサンプルファイルとツールが公開されています。
コマンドラインツールを使えば、既存のWebページをGwtarフォーマットに変換することもできます。Node.js環境があれば数分でセットアップ可能でしょう。
Webの「保存」という古くて新しい問題に、エレガントな解を提示したGwtar。静的サイトの運用や、ドキュメント配布の効率化を考えている方は、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
Gwtarは、Gwern氏が開発した「Webページを1つのHTMLファイルに効率的にパッケージングする」フォーマットです。圧縮・展開の仕組みが洗練されており、オフライン閲覧やドキュメント配布に実用的な選択肢を提供しています。
MHTMLやWARCでは解決しきれなかった「ブラウザで直接開ける・圧縮効率が高い・自己完結」という3つの条件を同時に満たしている点が、このフォーマットの最大の強みでしょう。
