2026年2月5日、AnthropicがClaude Opus 4.6を、OpenAIがGPT-5.3-Codexを同日にリリースしました。AI業界で同日リリースが起きるのは珍しいことではなくなりつつありますが、両方のモデルを日常的に使っている身としては、これほど面白いタイミングはなかった。

自分はPixel 4a上でOpenClawを動かし、Claude Opus 4.6をメインモデル、GPT-5.3-CodexをOAuthフォールバックとして運用しています。ベンチマークの比較記事は検索すれば山ほど出てくるので、ここでは数字ではなく、実際に使い比べて感じたことを書いていきます。

Opus 4.6を使い始めて最初に感じたこと

Opus 4.6に切り替えた直後、まず気づいたのは応答の「慎重さ」でした。前バージョンのOpus 4と比べても、曖昧な指示に対して確認を挟む頻度が増えている印象。たとえばブログ記事の下書きを依頼したとき、「ターゲット読者はどのあたりを想定していますか」と聞き返してきた。以前ならそのまま書き始めていたところです。

これは長文生成で特に効いてきます。3000文字を超える記事を書かせると、Opus 4.6は段落ごとの論理構成をかなり意識している印象がある。途中で文脈がブレることが減りました。技術解説の記事で「前半と後半で言っていることが矛盾している」といった問題が、体感として少なくなったかなと。

もう一つ印象的だったのは、Opus 4.6の「指示の行間を読む力」。たとえば「この記事を改善して」と漠然と伝えたとき、文体の統一、論理の飛躍の補完、読者目線での情報の補足を同時に提案してくることがありました。単なる校正ではなく、編集者のような振る舞い。これは結構驚きました。

一方で、スピードはCodexに劣ります。特にコード生成のタスクでは、Opus 4.6が丁寧に考えている間にCodexが回答を返し終えていることがある。慎重さと速度はトレードオフだと改めて実感しました。

Codexの得意領域はやはりコーディング

GPT-5.3-Codexの名前が示す通り、コーディングタスクでの応答は速く、正確。Pythonスクリプトの修正やシェルコマンドの生成では、ほぼ一発で動くコードが返ってくることが多いです。Opus 4.6が「この部分は環境によって異なる可能性があります」と注釈を付けてくるような場面でも、Codexは動くコードを即座に出してくれる。

具体的な例を挙げると、WordPressのREST APIを使って記事を自動投稿するスクリプトを書いてもらったとき、Codexは認証ヘッダーの設定からエラーハンドリングまで一気に生成しました。同じタスクをOpus 4.6に依頼すると、まず「認証方式はBasic AuthとOAuthのどちらを使いますか」という確認から始まる。どちらが良いかはケースバイケースですが、「とにかく今すぐ動かしたい」ときにはCodexの即断即決が助かります。

ただし、設計レベルの議論になるとOpus 4.6に軍配が上がる。「このアーキテクチャの問題点を指摘して」と聞いたとき、Codexはコードレベルの改善点を挙げますが、Opus 4.6はもう一段抽象的な視点から構造的な課題を指摘してくることがある。実装と設計で使い分けるのが現時点での自分の結論です。

フォールバック運用で見えた使い分けの実際

普段はOpus 4.6をメインで使い、レート制限に引っかかったときにCodexへ自動的に切り替わる設定にしています。このフォールバック構成の詳細は以前の記事に書いた通り。

このフォールバックが日常的に発動するようになって気づいたのは、モデルが切り替わったことに気づく瞬間と気づかない瞬間があるということ。単純な質問への回答やファイル操作の指示では、切り替わりをほぼ意識しない。どちらのモデルも十分な品質で応答してくれます。

差が出るのは、長い文脈を踏まえた判断が必要な場面ですね。たとえば「さっきの議論を踏まえて、この設計を修正して」といった指示を出したとき、Opus 4.6は文脈をより深く拾う傾向がある。Codexに切り替わった直後に同様の指示を出すと、文脈の一部が薄くなる感覚がありました。30分前に議論した制約条件を踏まえた提案と、その制約を忘れたかのような提案の差、と言えばわかりやすいかもしれません。

とはいえ、レート制限で完全に止まるよりは、Codexで作業を継続できる方がはるかに生産性は高い。100点の品質が95点になる程度の差で、作業が中断しないことの価値は大きいです。フォールバック先があるという安心感は、精神的にも作業効率を支えてくれています。

同日リリースが意味すること

AnthropicとOpenAIが同じ日にモデルをリリースしたことは、偶然かもしれないし、意図的かもしれない。いずれにせよ、ユーザーとして感じるのは選択肢が増えたという単純な事実です。

1年前を振り返ると、AIモデルの選択は「どれが一番優れているか」という一択の問題でした。今は「どのタスクにどのモデルを使うか」というポートフォリオの問題になっている。推論が必要な場面ではOpus 4.6、コーディングではCodex、コスト意識が高い場面ではさらに別の選択肢もある。

この変化は、Pixel 4aのような限られたハードウェアでAIエージェントを運用している自分にとっても好ましい。モデルを組み合わせることで、単一モデルでは実現できない運用の柔軟性が手に入る。高性能なモデルをレート制限の範囲内で使い、制限を超えたら別のモデルに切り替える。この「モデルのポートフォリオ運用」は、個人開発者にとってコスト管理の手段にもなっています。

競争が激化するほど、各モデルの得意領域は先鋭化していくはず。汎用性を追求するモデルと、特定用途に特化するモデルの棲み分けが今後さらに進みそうですね。ユーザーとしては、その棲み分けを理解した上で組み合わせるスキルが求められる時代になったと感じています。

結局、どう使い分けているか

1週間ほど両モデルを使い比べた結果、自分の中で落ち着いた使い分けは以下の通り。

記事の執筆、設計の議論、複雑な分析にはOpus 4.6。時間がかかってもいいから、論理の整合性と深さを重視したい場面ですね。コードの修正、スクリプトの生成、定型的な作業にはCodex。速度と実用性が求められる場面で、Codexの応答速度は心強い。

そして、レート制限によるフォールバックという仕組みが、この使い分けを半自動化してくれている。意図的に選ぶ場面と、システムが自動で切り替える場面の両方があり、どちらも日常の一部になりました。OpenClawのHeartbeat機能でタスク監視をしていることも、この運用を安定させる要素の一つです。

使い比べた先にある感覚

どちらが上かという議論に意味がないとは言いません。ベンチマークには確かに差がある。しかし、日常的に使い比べている立場から言えるのは、差はタスクの種類によって方向が変わるということ。

AIモデルの選択は、カメラの選択に近い感覚があります。風景を撮るなら広角レンズ、ポートレートなら中望遠。万能なレンズが存在しないように、万能なAIモデルもまだ存在しない。だからこそ、複数のモデルを切り替えながら使える環境を整えておくことに価値がある。

2026年2月5日の同日リリースは、AIの競争が新しいフェーズに入ったことを象徴しています。一つのモデルにすべてを賭けるのではなく、複数のモデルを場面に応じて使い分ける。そのための環境構築が、今後ますます重要になっていくはずです。自分自身、この1週間の体験を通じて、モデルの切り替えに対する心理的な抵抗がほぼなくなりました。どのモデルも道具であり、使いこなすのは自分自身。それだけです。

参考リンク:Anthropic公式サイト / OpenAI公式サイト