AWSがEC2インスタンスでネステッド仮想化(Nested Virtualization)のサポートを追加したことが話題になっています。これまでベアメタルインスタンスでしか実現できなかった「仮想マシンの中で仮想マシンを動かす」構成が、通常のEC2インスタンスでも利用可能になりました。
AWS ネステッド仮想化とは何か
ネステッド仮想化とは、ハイパーバイザー上で動作する仮想マシンの中で、さらに別のハイパーバイザーを起動する技術です。たとえばEC2インスタンスの中でKVMやHyper-Vを動かし、そこにゲストOSを立ち上げるといった使い方ができます。
Google CloudやAzureでは以前から標準的にサポートされていた機能ですが、AWSでは長らくベアメタルインスタンス(i3.metal、m5.metalなど)に限定されていました。今回のアップデートで、Nitroベースの一般的なインスタンスタイプでもこの機能が使えるようになっています。
なぜ今このタイミングなのか
背景にはいくつかの要因がありそうです。まず、コンテナ技術だけではカバーしきれないワークロードが増えていること。セキュリティテストやOS開発、マルチクラウド検証環境など、「完全な仮想マシン」が必要なシナリオは意外と多いんですよね。
また、Anthropic 300億ドル調達のような大規模AI開発の流れの中で、開発・テスト環境の柔軟性に対する需要が高まっていることも一因かもしれません。ベアメタルインスタンスは高額なので、もう少し手軽に使えるオプションが求められていました。
具体的な活用シーン
実際にどんな場面で役立つのか、いくつか挙げてみます。
CI/CDパイプラインでのOS横断テスト: Linux上のEC2インスタンスでWindows VMを立ち上げてテストを回す、といった構成が実現できます。これまでは別途Windowsインスタンスを用意する必要がありましたが、ネステッド仮想化を使えば1台のインスタンスで複数OSのテストが可能です。
セキュリティ研究・マルウェア解析: 隔離されたVM環境でマルウェアの動作を観察するのは、セキュリティ研究の基本です。クラウド上で手軽にサンドボックスを構築できるようになったのは大きいですね。
オンプレミス移行の事前検証: 既存のVMware環境をAWSに移行する前に、EC2上でVMware互換環境を立ち上げて動作確認する、といった使い方も考えられます。
技術的な制約と注意点
便利な機能ではありますが、いくつか気をつけるべき点もあります。まず、パフォーマンスのオーバーヘッド。仮想化を二重に行うため、ゲストVMのI/O性能やCPU性能はどうしてもネイティブ比で落ちます。
また、すべてのインスタンスタイプで利用可能というわけではなく、Nitroシステムベースのインスタンスに限定されています。対応状況はAWS公式ドキュメントで確認するのが確実です。
ライセンスの問題も見落としがちなポイントです。ゲストOSとしてWindowsを動かす場合、ライセンスの持ち込み(BYOL)が必要になるケースがあります。
他のクラウドとの比較
Google Cloudは2017年からネステッド仮想化をサポートしており、この分野では先行していました。Azureも同様に早い段階からサポートしていたので、AWSはやや後発と言えます。
ただし、AWSのNitroシステムはハードウェアレベルで仮想化処理をオフロードしているため、ネステッド仮想化時のパフォーマンスペナルティが他社よりも小さい可能性があります。この点はベンチマーク結果が出てくるのを待ちたいところです。
まとめ
AWSのEC2ネステッド仮想化サポートは、開発者やインフラエンジニアにとってかなり実用的なアップデートだと感じました。ベアメタルインスタンスに頼らなくても済むようになったことで、コスト面でのハードルがぐっと下がっています。RAGとはのようなAI関連ワークロードの検証環境としても使えそうですね。
クラウド上で柔軟にVM環境を構築したい方は、一度試してみる価値がありそうです。