Armが「設計だけ」から脱却しようとしている

半導体業界でArmといえば、スマートフォン向けチップの設計IPを提供するライセンスビジネスのイメージが強いと思います。実際、世界中のスマホの99%以上がArm設計のプロセッサを搭載しているんですよね。

しかし最近のArmは、モバイル以外の領域、特にサーバーやAIチップ市場で存在感を急速に高めています。Hacker Newsでも「Arm wants a bigger slice of the chip business」という記事が注目を集めていました。

サーバー市場でのArmの躍進

ArmベースのサーバーチップはすでにAWS Gravitonシリーズで実績を積んでいます。AWS Gravitonは、x86ベースのインスタンスと比較して最大40%のコストパフォーマンス改善を謳っており、実際に多くの企業が移行を進めています。

Googleも自社設計のArmベースプロセッサ「Axion」をクラウドに導入しており、Microsoftも「Cobalt」というArmサーバーチップを発表済みです。主要クラウド3社がすべてArm系チップを採用しているのは、この流れがもう止まらないことを示しています。

AI推論チップとしてのArmの強み

AIモデルの推論(学習済みモデルを使って結果を出す処理)では、消費電力あたりの性能が重要です。この点で、もともと省電力設計が得意なArmアーキテクチャには大きなアドバンテージがあります。

NVIDIAのGPUが学習・推論両方で圧倒的なシェアを持っていますが、推論専用のワークロードでは「GPUほどの並列処理は不要だけど、省電力で大量に処理したい」というニーズもあるんですね。こうした領域でArmベースのカスタムチップが入り込む余地は十分にあります。

IntelとAMDにとっての脅威

長年サーバー市場を支配してきたIntelにとって、Armの進出は深刻な脅威です。IntelはすでにPC市場でもApple Silicon(Armベース)に顧客を奪われており、サーバー市場でも同じ流れが加速すれば、収益基盤の根幹が揺らぎかねません。

AMDはEPYCシリーズで好調ですが、こちらもArm勢の伸びは警戒材料です。ただし、x86の膨大なソフトウェアエコシステムはまだ大きな壁として機能しているのも事実です。

Arm チップ事業拡大の課題

Armがチップ事業を拡大するうえでの最大の課題は、ソフトウェアエコシステムの成熟度でしょう。サーバーソフトウェアの多くはx86向けに最適化されてきた歴史があり、Arm向けのパフォーマンスチューニングはまだ発展途上の部分もあります。

とはいえ、LinuxカーネルのArm64サポートは非常に成熟しており、主要なプログラミング言語やフレームワークのArm対応もほぼ完了しています。実際にAWSのEC2でGravitonインスタンスを使ってみると、互換性の問題で困ることはほとんどなくなりました。

Armのビジネスモデルの変化

従来のArmは「チップ設計のIPをライセンスする」ビジネスが中心でした。しかし最近は、より完成度の高いリファレンスデザインの提供や、チップ1個あたりのロイヤリティ料率の引き上げなど、収益構造の転換を図っています。

SoftBankの傘下にあるArmは、2023年のIPO以降、株価もかなり上昇していますね。サーバーやAI領域への拡大が成功すれば、さらなる成長が見込めるわけで、投資家の期待も高まっています。

まとめ

Armがモバイル以外の領域、特にサーバーとAIチップ市場に本格的に切り込んでいく姿勢は、半導体業界の勢力図を書き換える可能性を秘めています。省電力・高効率というArmの強みは、AIワークロードとの相性も良く、今後の展開が楽しみです。

半導体やAIインフラの動向に興味がある方は、SpaceXがxAIを買収した話もチェックしてみてください。AIとハードウェアの融合が進む2026年の全体像が見えてくると思います。