自宅の安全を守るために設置したスマートカメラが、実は監視インフラの一部になっている——そんな話を聞くと不安になりますよね。最近、Amazon RingやGoogle Nestのデータが米国の法執行機関にどれだけ提供されているかが改めて議論されています。
Amazon Ringと法執行機関の関係
Amazon Ringは、玄関に設置するドアベルカメラとして米国で爆発的に普及しました。便利なのは間違いないのですが、問題はその映像データの扱いです。Ringは過去に、ユーザーの同意なしに警察へ映像を提供していたことが判明しています。
2024年以降、Amazonは「令状なしでの映像提供は行わない」と方針を変更したものの、令状があれば当然データは提供されます。しかも、電子フロンティア財団(EFF)の調査によると、令状の発行基準は地域によって大きく異なり、実質的にはかなり広範なデータアクセスが行われている可能性があるとのことです。
Google Nestも例外ではない
Google Nestカメラも同様の問題を抱えています。Googleはプライバシーポリシーで法的要請への対応を明記しており、ジオフェンス令状(特定の場所・時間帯にいた全ユーザーのデータを求める令状)への対応も行っています。
これは個別の犯罪捜査ではなく、「ある場所に居合わせた全員」のデータを網羅的に収集する手法です。たまたまその場所を通りかかっただけの無関係な人のデータまで含まれてしまうんですよね。
スマートホームが「監視インフラ」になる構造
ここで考えたいのは、個々の製品の問題ではなく、構造的な問題だということです。クラウドに映像を保存する仕組みである以上、そのデータへの法的アクセスは常に可能性として存在します。
さらに、RingにはNeighborsアプリという地域SNS機能があり、ユーザー同士で「不審者情報」を共有できます。これが事実上の相互監視ネットワークとして機能しているという批判もあります。善意で始まった機能が、人種プロファイリングや過剰な監視に繋がるリスクは無視できません。
日本のスマートホーム市場への示唆
日本ではまだ米国ほどスマートカメラが普及していませんが、Bluetoothの個人情報漏洩リスクやスマートスリープマスクのプライバシー問題でも触れたように、IoTデバイスのプライバシーリスクは着実に広がっています。
また、プロトコルファースト思考の記事で書いたように、特定のサービスに依存することがそのままプライバシーリスクになるという構造は、スマートホームにもそっくり当てはまります。
自分のデータを守るためにできること
では、スマートカメラを使いつつプライバシーを守るにはどうすればいいのでしょうか。
ローカル保存を選ぶのが一番確実です。クラウドではなくmicroSDカードやNAS(ネットワークストレージ)に映像を保存するタイプのカメラなら、第三者にデータが渡るリスクは大幅に減ります。
オープンソースの選択肢を検討するのも一つの手です。Frigateのようなセルフホスト型のNVR(ネットワークビデオレコーダー)を使えば、映像データを完全に自分の管理下に置けます。
利用規約を確認することも大切です。特に「法執行機関への情報提供」に関する条項は、製品選びの重要な判断材料になります。
まとめ
スマートホームデバイスの便利さは本物ですが、その裏側にあるデータの流れを理解しておくことが重要だと感じています。「何も悪いことをしていないから問題ない」という考え方は、プライバシーの文脈では通用しません。自分のデータは自分で管理する——その意識を持つことが、スマートホーム時代の基本リテラシーになっていくのではないでしょうか。
