なぜ今XMPPサーバーを自分で立てるのか
LINEやSlack、Discordなど便利なメッセージングサービスはたくさんありますが、「自分のメッセージデータを自分で管理したい」と思ったことはないでしょうか。Hacker Newsでも「Running My Own XMPP Server」という投稿が話題になっていて、改めてセルフホスティングの価値が見直されているんですよね。
XMPP(Extensible Messaging and Presence Protocol)は、もともとJabberとして知られていたオープンなメッセージングプロトコルです。GoogleトークやFacebook Messengerの初期バージョンでも採用されていた実績があります。2026年の今でも活発に開発が続いていて、音声通話やビデオ通話にも対応しています。
XMPPの基本的な仕組み
XMPPはIETF標準のプロトコルで、メールと似た分散型アーキテクチャを持っています。メールアドレスのように「user@server.example.com」という形式のアカウントを使い、異なるサーバー間でもメッセージを送受信できるのが特徴です。
これはLINEやSlackとは根本的に異なる設計思想ですね。LINEのユーザーはLINEのサーバーにしかアカウントを持てませんが、XMPPでは自分のサーバーにアカウントを作って、他のXMPPサーバーのユーザーともやり取りできます。メールの仕組みをそのまま即時メッセージングに適用したイメージです。
Prosodyでサーバーを構築する手順
XMPPサーバーソフトウェアはいくつかありますが、個人利用ならProsodyが最も手軽です。Luaで書かれた軽量なサーバーで、Raspberry Piでも動くほどリソース消費が少ないんですよね。
必要なもの
- Linux環境(Ubuntu/Debian推奨、VPSや自宅サーバー)
- 独自ドメイン(Let’s Encryptで無料SSL取得のため)
- ポート開放(5222: クライアント接続、5269: サーバー間通信)
Prosodyのインストール
Ubuntu/Debianであれば、パッケージマネージャから簡単にインストールできます。公式リポジトリを追加してapt installするだけで、基本的なセットアップは完了します。設定ファイルは /etc/prosody/prosody.cfg.lua にあり、ドメイン名やTLS証明書のパスを指定するだけで動き始めます。
Let’s Encryptの証明書はcertbotで取得して、Prosodyに読み込ませる形になりますね。最近のProsodyはACMEプラグインも搭載しているので、証明書の自動更新もサーバー側で完結できます。
クライアントアプリの選び方
サーバーを立てたら、次はクライアントアプリです。XMPPクライアントは各プラットフォームに複数あります。
- iOS: Siskin IM、Monal(どちらも無料でプッシュ通知対応)
- Android: Conversations(高機能、OMEMO暗号化対応)
- デスクトップ: Gajim(Windows/Linux)、Beagle IM(macOS)
- Web: Converse.js(ブラウザベース)
特にAndroidのConversationsアプリは完成度が高くて、LINEに近い使用感で利用できます。グループチャット、画像共有、音声メッセージなど一通りの機能が揃っていますね。
セキュリティとプライバシーの利点
自前XMPPサーバーの最大のメリットは、メッセージデータを完全に自分で管理できることです。Bluetoothの情報漏洩やChrome拡張のスパイウェア問題が次々と明らかになる中、通信経路を自分で制御できるのは安心感がありますよね。
XMPPではOMEMOというエンドツーエンド暗号化(E2EE)が標準的に利用できます。Signalプロトコルをベースにしたもので、サーバー管理者でさえメッセージの中身を読むことができません。自分がサーバー管理者であっても、E2EEが有効な通信は復号できないという徹底ぶりです。
運用で気をつけるポイント
自前サーバーの運用にはそれなりの手間がかかるのも事実です。
- メンテナンス: OSとProsodyのセキュリティアップデートを定期的に適用する必要がある
- バックアップ: メッセージ履歴のバックアップを自動化しておくべき
- DNS設定: SRVレコードの設定が必要(サーバー間通信のため)
- スパム対策: 外部からの接続を受け入れる場合、スパムフィルタの設定が重要
ボット攻撃の実態を知っていると、公開サーバーのセキュリティ対策の重要性がよくわかりますね。Prosodyにはrate limitingやIP制限の機能が組み込まれているので、適切に設定すれば個人サーバーでも十分守れます。
LINEやSlackとの共存
現実的には、周囲の人が全員XMPPに移行するのは難しいでしょう。そこで、XMPPサーバーは「プライベートな会話用」として使い、一般的な連絡はLINEやSlackを継続するのが現実的な運用方針だと思います。
家族間の連絡、機密性の高いビジネスコミュニケーション、あるいはAIエージェント同士の通信基盤として活用するのも面白いアイデアです。XMPPはBot向けのライブラリも豊富で、自動化との相性が良い点も魅力ですね。
まとめ:メッセージングの自由は技術で取り戻せる
XMPPサーバーの自前構築は、技術的にはそれほど難しくありません。Prosodyなら1時間もあればセットアップが完了しますし、運用コストもVPS代の月数百円程度で済みます。
大手プラットフォームにメッセージデータを預けることに抵抗がある方、あるいは単純に「自分のインフラを持つ」ことに楽しさを感じる方には、試してみる価値のあるプロジェクトだと感じました。メールが分散型で動いているように、メッセージングも本来は分散型であるべきなのかもしれません。
