
自動運転車というと「完全に無人で走る」イメージが強いかもしれませんが、実はその裏側で人間のオペレーターが重要な役割を果たしています。Waymoが公開した「Remote Assistance」(遠隔支援)の仕組みは、自動運転の現実と未来を考える上でとても興味深い内容でした。
Remote Assistanceとは何か
WaymoのRemote Assistanceは、自動運転車が判断に迷う場面で、遠隔のオペレーターがガイダンスを提供するシステムです。ここで重要なのは、オペレーターが車を「遠隔操縦」するわけではないという点です。あくまで「アドバイス」を送るだけで、最終的な運転操作は車両のAIシステムが行います。
Waymo自身も「control(制御)ではなくadvice(助言)」と明確に区別しています。この違いは技術的にもかなり大きな意味を持っていて、遠隔操縦の場合は通信遅延が安全性に直結しますが、助言型であればその問題を回避できるんですよね。
Waymo Remote Assistanceの具体的な仕組み
WaymoのRemote Assistanceが活用される典型的な場面は、工事現場での迂回、警察官の手信号への対応、倒木や落下物の回避といった、通常の自動運転アルゴリズムでは対処しにくい状況です。
車両が「判断が必要な状況」を検知すると、オペレーションセンターに通知が送られます。オペレーターは車両のカメラ映像やセンサーデータを確認し、「この経路で迂回してください」「この障害物の左側を通過してください」といったガイダンスを送信します。
一連のやり取りは数秒から数十秒で完了し、車両は受け取ったガイダンスを元に安全な経路を再計算して走行を続けます。
Waymoと他社の自動運転アプローチの違い
自動運転業界では、Teslaのロボタクシーが注目を集めていますが、アプローチは大きく異なります。Teslaはカメラのみでの自動運転を目指していますが、Waymoはlidar・レーダー・カメラの組み合わせに加えて、この遠隔支援という人間のバックアップも組み込んでいます。
Waymoの第6世代ドライバーではセンサー性能が大幅に向上していますが、それでもRemote Assistanceは廃止されていません。むしろ、これを安全性の重要な層として積極的に位置づけているようです。
「完全自動運転」の現実
自動運転のレベル分類でいうと、Waymoはレベル4(特定条件下での完全自動運転)に位置づけられています。しかし、現実にはRemote Assistanceのような人間の関与が不可欠な場面がまだ存在します。
これは必ずしもネガティブな話ではないと思います。Waymo×DeepMindのシミュレーション技術の進化によって、遠隔支援が必要なケースは着実に減っています。完全な無人化を急ぐよりも、安全性を最優先にしながら段階的に自動化レベルを上げていくアプローチの方が、結果的に社会受容性も高まるのではないでしょうか。
遠隔支援オペレーターという仕事
あまり注目されていませんが、自動運転の遠隔支援オペレーターは今後需要が増える職種だと感じています。Waymoだけでなく、CruiseやZooxといった他の自動運転企業も同様の仕組みを採用しています。
この仕事は、単に画面を見ているだけではなく、瞬時の状況判断と適切なガイダンスの送信が求められます。交通法規の知識、地域の道路事情の理解、そしてストレス下での冷静な判断力が必要な、なかなか高度な職種です。
日本の自動運転への影響
日本でも自動運転の実証実験が各地で進んでいますが、遠隔支援の体制構築は課題の一つです。Waymoのモデルは、日本の自動運転サービス設計にも参考になる点が多いと思います。
特に、過疎地での交通手段確保や高齢ドライバーの代替として自動運転が期待されている日本では、「完全無人」にこだわるよりも、遠隔支援付きの自動運転を早期に実用化する方が現実的かもしれません。
まとめ
WaymoのRemote Assistanceは、「制御ではなく助言」という設計思想で自動運転の安全性を補完するシステムです。完全自動運転への過渡期において、人間とAIがどう協力すべきかを示す良いモデルだと感じました。自動運転の議論は「人間 vs AI」になりがちですが、実際にはWaymoのように「人間 and AI」で安全性を高めていくアプローチの方が、社会に受け入れられやすいのではないかと思います。