最近、海外のエンジニアコミュニティで「トークン不安(Token Anxiety)」という言葉が話題になっています。AIコーディングエージェントが手元にある状態だと、通勤中でも、子供の送り迎え中でも「何かタスクを回せるのでは」と感じてしまう——そんな新しい種類の焦燥感を指す言葉なんですよね。
トークン不安が生まれた背景
Claude CodeやGitHub Copilot Agentのようなツールが普及したことで、コーディングの作業形態が大きく変わりました。以前は「PCの前に座ってコードを書く」のが仕事だったのに、今はスマホからプロンプトを送るだけでエージェントがコードを生成してくれます。
一見すると素晴らしい進化に思えますが、これが逆に「いつでもどこでも仕事ができる」というプレッシャーに変わっているケースがあるようです。ブログプラットフォームBlueskyでは、あるエンジニアが「常に何かを動かしていないと不安になる」と投稿し、大きな反響を呼びました。
スロットマシンとの類似性
この問題を深く掘り下げると、興味深い構造が見えてきます。LLMベースのコーディングエージェントは、ある意味でスロットマシンに似ているんですよね。プロンプトを投げるたびにトークンが消費され、結果が出る。うまくいけば「ジャックポット」——完璧なコードが返ってくる。でも失敗すれば、また課金してリトライすることになります。
作家のCory Doctorowは「人間はジャックポットしか覚えていない」と指摘しています。成功体験だけが記憶に残り、失敗した試行回数は忘れてしまう。これはまさにギャンブルの心理と同じ構造です。
企業側の圧力も問題を加速させている
さらに厄介なのは、企業側がAIツールの使用を推奨(場合によっては義務化)する動きが広がっている点です。「生産性が上がるはずだ」という前提で導入されるものの、実際にはAI使用がスキル定着を阻害するという研究結果も出ています。
米国のテック企業では、中国発の「996」スケジュール(朝9時〜夜9時、週6日)を取り入れる動きも報告されています。AIエージェントの存在が、この長時間労働の正当化に使われているのは皮肉な話だと感じました。
トークン不安への対処法
では、この問題にどう向き合えばいいのでしょうか。いくつかのアプローチを考えてみました。
まず、「オフの時間」を明確に設定することが大切です。AIエージェントが24時間使えるからといって、自分も24時間稼働する必要はありません。通知をオフにして、意識的にデジタルデトックスの時間を作るのが効果的だと思います。
次に、AIの出力を過信しないこと。エージェントが生成したコードは必ずレビューが必要ですし、そのレビュー自体が重要なスキルトレーニングになります。「AIに任せておけばOK」という思考は、長期的には自分の技術力を損なう可能性があります。
そして、コスト意識を持つこと。トークン消費は目に見えにくいですが、実際にはお金がかかっています。「とりあえずプロンプトを投げてみる」を繰り返すより、しっかり要件を整理してから依頼した方が、結果的に効率も品質も上がるケースが多いんですよね。
関連する動き:AI依存をめぐる議論
この問題は個人レベルにとどまりません。LLMエージェントのコストが二次関数的に膨らむ問題でも触れたように、AIエージェントの利用コストは使い方次第で急激に増加します。また、Anthropicの透明性をめぐる議論にも見られるように、AI企業と開発者の間には信頼関係の構築が求められています。
一方で、IBMがAI導入の限界を認めて新卒採用を増やした事例のように、AIだけに頼らない判断をする企業も出てきています。
まとめ:道具に使われない意識が大切
トークン不安は、テクノロジーが便利になるほど人間側に新しいストレスが生まれるという、ある意味で普遍的な問題の最新形だと思います。スマホ依存、SNS疲れ、そして今度はAIエージェント依存。道具は道具として使いこなす——その意識を持つことが、結局は一番の対処法なのかもしれません。
参考になれば幸いです。
