個人開発者にとって「月額課金のSaaSを作って独立する」という夢は、ここ数年で急速にリアリティを失いつつあるかもしれません。スウェーデンの開発者Johan Halse氏が「The Sideprocalypse(サイドプロカリプス)」と名付けた現象が、2026年のテック業界で静かに話題になっています。
サイドプロカリプスとは何か
サイドプロカリプスは「サイドプロジェクト」と「アポカリプス(終末)」を組み合わせた造語です。要するに、個人がコツコツ作ったSaaSプロダクトで食べていく時代が終わりつつある、という問題提起なんですよね。
背景にあるのは、AIエージェントやLLMツールの急速な普及です。以前なら「便利なツールを作って月額$19.99で提供する」というモデルが成り立っていたところに、AIが同等以上の機能を瞬時に生成できるようになってしまいました。
品質よりもSEOとマーケティングが勝つ現実
Halse氏が指摘する核心は、「品質は2026年においてもはや指標ではない」という厳しい現実です。TTFPやINP(Interaction to Next Paint)を気にして丁寧に作り込んでも、SEOに長けた競合がAIで量産したプロダクトに埋もれてしまう。
実際、「初回ロード時にトゥームストーンスピナーが回る」ようなサイトや、購入フローがそもそも動かないサービスすら、ユーザーが受け入れる時代になりました。品質で差別化するという前提そのものが崩れかけているわけです。
AIエージェントのコスト問題も絡む
一方で、AIエージェントを使って大量のプロダクトを生成する側にもリスクがあります。LLMエージェントのコストは二次関数的に膨らむことが知られていて、トークン消費が想定以上に大きくなるケースも多いです。
つまり、AIで量産する側も「誰にも見つけてもらえず、誰も課金せず、トークンだけが燃えていく」という結末を迎える可能性があるんですよね。ゴールドラッシュでスコップを売る側だけが儲かる構図は、今回も変わらないのかもしれません。
ではどうすればいいのか
Halse氏は「ソフトウェアの未来はハイタッチなエンタープライズ営業にある」と主張しています。個人開発者にとっては厳しい見方ですが、一理あるなと感じました。
ただ、すべてのサイドプロジェクトが死ぬわけではないと思います。重要なのは以下のポイントかなと。
- ニッチを深掘りする:AIが簡単に代替できない専門領域に特化する
- コミュニティを作る:プロダクトだけでなく、人とのつながりが参入障壁になる
- エンタープライズ向けに振る:B2B × カスタマイズ性で勝負する
AIに先行者利益はないという議論もある中で、持続可能な差別化をどう作るかが問われていますね。
SaaSビルダーへの提言
「サイドプロジェクトで独立」という夢を完全に捨てる必要はないと思います。ただ、2026年のゲームルールが変わったことは認識しておいた方がよさそうです。コードの限界価値が下がっている以上、技術力だけでは差がつかない時代にどう戦うか。
むしろ、この状況をチャンスと捉えるなら、AIエージェントを活用しつつも、人間にしか提供できない価値——信頼、関係性、ドメイン知識——をコアに据えるアプローチが有効ではないでしょうか。結局、テクノロジーは手段であって目的ではないですからね。