シャドーITとは
シャドーITとは、企業のIT部門の許可や管理なしに、従業員が独自に利用しているソフトウェア、ハードウェア、クラウドサービスのことだ。個人のDropboxアカウントで業務ファイルを共有したり、チーム内でSlackの無料版を勝手に使い始めたりするケースが典型例になる。
この問題自体は以前からあったが、リモートワークの普及やSaaSサービスの爆発的な増加により、ここ数年で一気に深刻化した。Gartnerの調査によれば、企業のIT支出の30〜40%がシャドーITに関連しているとされる。
シャドーITが生まれる理由
従業員がシャドーITに手を出す最大の理由は「公式ツールが使いにくい」からだ。IT部門が承認した業務ツールの操作性が悪い、導入に時間がかかる、申請プロセスが面倒、といった不満が背景にある。
特にITリテラシーの高い従業員ほど、自分で便利なツールを見つけて使い始める傾向がある。本人に悪意はなく、純粋に業務効率を上げたいだけというケースが多い。これがシャドーIT対策を難しくしている一因でもある。
具体的なリスク
シャドーITの主なリスクは以下の通りだ。
情報漏洩:個人アカウントのクラウドストレージに機密データが保存されると、退職時のデータ回収や、アカウント侵害時の対応が困難になる。
コンプライアンス違反:業界規制や個人情報保護法(GDPR、個人情報保護法など)に準拠していないツールの使用は、法的リスクにつながる。
セキュリティホール:IT部門が把握していないソフトウェアは、セキュリティパッチの適用やアクセス管理が行き届かない。
データのサイロ化:バラバラのツールにデータが分散すると、組織全体での情報共有や分析が困難になる。
シャドーITの具体例
よくあるシャドーITの例を挙げると、以下のようなものがある。
個人のGoogleドライブで業務資料を管理、LINE・WhatsAppでの業務連絡、非公認のプロジェクト管理ツール(Trello、Notionなど)の使用、個人契約のChatGPTでの業務データ入力、フリーのVPNやファイル転送サービスの利用などだ。特に生成AIの業務利用は、機密情報の漏洩リスクとして新たに注目されている。
効果的な対策
シャドーITへの対策は「禁止」だけでは機能しない。むしろ、従業員のニーズを理解し、公式に使える選択肢を増やすアプローチが有効だ。
CASB(Cloud Access Security Broker)の導入:クラウドサービスの利用状況を可視化し、リスクの高い利用を検知するツールだ。
ツール選定への現場参加:IT部門だけでなく、実際に使う現場の声を取り入れてツールを選ぶことで、「勝手に使う」動機を減らせる。
セキュリティ教育:なぜシャドーITが危険なのかを定期的に周知し、安全な代替手段を案内する。
ゼロトラストセキュリティの採用:すべてのアクセスを検証する前提のセキュリティモデルで、未承認ツールのリスクを低減する。
まとめ
シャドーITは完全にゼロにすることは難しいが、適切な管理と従業員への配慮を組み合わせることで、リスクを大幅に抑えられる。重要なのは、セキュリティを厳しくしすぎて業務効率を犠牲にしないバランス感覚だ。DXが進むなかで、IT部門と現場の協力体制がますます問われている。
