Rustとは

Rustは、メモリ安全性とパフォーマンスを両立するシステムプログラミング言語です。Mozilla Research が2010年に開発を始め、2015年に安定版がリリースされました。以来、Stack Overflowの開発者調査で「もっとも愛されている言語」に連続で選ばれ続けています。

C/C++のような低レベル制御が可能でありながら、ガベージコレクターなしでメモリ安全性を保証するという、従来は不可能と思われていたことを実現しています。

なぜ2026年にRustを学ぶべきか

採用企業・プロジェクトの急増

Rustは大手テック企業での採用が加速しています。LinuxカーネルがRustを正式にサポートし、Microsoftは Windows の一部コンポーネントをRustで書き直しています。GoogleはAndroidやChromeのセキュリティクリティカルな部分にRustを導入しました。

AWSのFirecrackerやCloudflareのエッジサーバーなど、インフラ領域でもRustの存在感は増す一方です。

WebAssemblyとの親和性

WebAssembly(Wasm)の開発言語として、Rustは第一選択肢になっています。wasm-packやwasm-bindgenといったツールチェーンが充実しており、RustからWasmへのコンパイルがスムーズです。

AIツールとの相性

Rustは型システムが厳密であるため、AIコーディングツールとの相性が良いという特徴があります。コンパイラが詳細なエラーメッセージを出すため、AIが修正案を出しやすく、Vibe Codingスタイルでの開発にも適しています。

Rustの核となる特徴

所有権システム

Rustの最大の特徴は所有権(Ownership)システムです。これはRust独自の仕組みで、コンパイル時にメモリの安全性を検証します。

基本ルールはシンプルです。各値には「所有者」となる変数が一つだけ存在し、所有者がスコープを抜けると値は自動的に解放されます。値を別の変数に渡すと、所有権が「移動(ムーブ)」します。

最初は「なぜコンパイラに怒られるのか分からない」という経験をすると思いますが、これはRustの学習曲線として有名な部分です。慣れてくると、「コンパイルが通れば安全」という安心感が得られるようになります。

借用とライフタイム

所有権を移動させずに値を使いたい場合は、「借用(Borrowing)」を使います。不変借用(&T)と可変借用(&mut T)の2種類があり、「不変借用はいくつでも同時にOK、可変借用は同時に一つだけ」というルールで、データ競合をコンパイル時に防止します。

パターンマッチング

Rustのmatch式は強力なパターンマッチング機能を提供します。enumと組み合わせることで、すべてのケースを漏れなく処理することをコンパイラが保証してくれます。NULLポインタの代わりにOption型を使い、エラー処理にはResult型を使う設計は、バグの発生を根本的に減らします。

ゼロコスト抽象化

Rustのイテレータやジェネリクスは「ゼロコスト抽象化」を実現しています。高レベルな抽象的コードを書いても、コンパイル後は手書きの低レベルコードと同等のパフォーマンスが得られます。

Rustの始め方

インストール

Rustのインストールはrustupを使うのが標準です。ターミナルで一行のコマンドを実行するだけで、Rustコンパイラ(rustc)、パッケージマネージャ(Cargo)、標準ライブラリがインストールされます。

最初のプロジェクト

Cargoを使って新しいプロジェクトを作成し、cargo runで実行するのが基本の流れです。Cargoはビルド、テスト、依存関係の管理、ドキュメント生成まで一元的に行える優秀なツールです。

開発環境

エディタはVS Code + rust-analyzerの組み合わせが定番です。rust-analyzerは型推論の表示、コード補完、エラーのリアルタイム表示など、強力なサポートを提供してくれます。

2026年版 学習ロードマップ

フェーズ1:基礎(1〜2週間)

  • 公式チュートリアル「The Rust Programming Language」を読む
  • 変数、関数、制御フロー、構造体の基本を理解する
  • Rustlingsの練習問題で手を動かす

フェーズ2:所有権の壁を越える(2〜4週間)

  • 所有権、借用、ライフタイムを集中的に学ぶ
  • 小さなCLIツールを作ってみる
  • エラーハンドリング(Result、Option)に慣れる

フェーズ3:実践プロジェクト(1〜2ヶ月)

  • Webアプリ:Axumフレームワークで簡単なAPIサーバーを構築
  • CLIツール:clapクレートを使ったコマンドラインツール
  • Wasm:wasm-packでブラウザ上のインタラクティブなアプリ

フェーズ4:深堀り(継続的)

  • 非同期プログラミング(Tokio)
  • unsafe Rustの理解
  • マクロの作成
  • オープンソースプロジェクトへの貢献

Rustの活用領域

2026年現在、Rustが特に強い領域は以下のとおりです。

  • システムプログラミング:OS、ドライバ、組み込みシステム
  • Web開発:Axum、Actixなどのバックエンドフレームワーク
  • WebAssembly:ブラウザ向け高速アプリケーション
  • CLIツール:ripgrep、bat、fdなど高速なコマンドラインツール
  • ブロックチェーン:Solana、Polkadotなどの基盤技術
  • ゲーム開発:Bevyエンジンの成長

DenoもRustで書かれており、JavaScriptランタイムの世界でもRustの存在感は大きくなっています。

Rustの課題

Rustは素晴らしい言語ですが、正直に言って学習曲線は急です。特に所有権とライフタイムの概念は、他の言語から来た開発者にとって最初のハードルになります。

ただし、このハードルを越えた先には「コンパイルが通ればほぼ正しく動く」という生産性の高い体験が待っています。コンパイラのエラーメッセージが非常に親切なので、メッセージを丁寧に読む習慣をつけることが上達の近道です。

また、コンパイル時間の長さも課題として挙げられますが、増分コンパイルの改善やcraneliftバックエンドの導入により、年々改善されています。

まとめ

Rustは、メモリ安全性、パフォーマンス、開発者体験を高いレベルで両立するプログラミング言語です。2026年現在、LinuxカーネルからWebAssemblyまで、活用領域は広がり続けています。

学習コストは確かに高いですが、AIコーディングツールの進化によりハードルは下がっています。「次に学ぶ言語」を探している方にとって、Rustは間違いなく有力な選択肢です。まずはrustupでインストールして、最初のHello Worldを書いてみてください。