何が起きたのか
Go製のオープンソースBaaS(Backend as a Service)として人気のPocketBaseが、FLOSS Fundからのスポンサーシップを辞退したことが開発者コミュニティで話題になっています。
事の経緯はこうです。2025年末、FLOSS Fund(Free/Libre Open Source Software Fund)がPocketBaseを第2期の支援対象に選出しました。FLOSS Fundはインドのフィンテック企業Zerodhaが運営するオープンソース支援プログラムで、条件なしの資金提供を行っています。
PocketBaseの開発者であるGani氏は、この資金によって1年間フルタイムでPocketBaseの開発に専念し、安定版リリースを目指すと発表しました。UIの全面書き換えにも着手していたんですよね。
辞退の理由
しかし、実際に資金を受け取る段階で問題が発生しました。FLOSS FundとGitHubの提携が予定通りに機能せず、代替としてインドからの国際送金が提案されたのですが、Gani氏はこれに不安を感じて辞退を決断しています。
具体的には、複数の国をまたぐ書類手続きが必要になること、そして個人の機密情報をセキュリティが十分でない共有メール経由で処理することへの懸念が理由でした。率直に言って、この判断は理解できます。オープンソース開発者が個人情報を海外の政府機関に提供することのリスクは小さくないですよね。
オープンソース資金調達の構造的問題
この出来事は、オープンソースの資金調達が抱えるいくつかの構造的な問題を浮き彫りにしています。
まず、国際送金の壁です。オープンソース開発者は世界中にいますが、資金提供元の多くは特定の国に拠点を置いています。国をまたぐ送金には規制やコンプライアンスの問題がつきまとい、個人開発者にとってはハードルが高いことがあります。
次に、発表のタイミング。Gani氏自身も認めているように、資金が実際に入金される前に大きな発表をしてしまったことは反省点だったようです。これはオープンソースプロジェクトに限らず、スタートアップの資金調達でもよくある話ですね。
そして、個人開発者の脆弱性。企業であれば法務部門が国際取引の手続きを処理できますが、個人開発者にはそのリソースがありません。
PocketBaseの現状と今後
資金辞退後もPocketBaseの開発は継続しています。Gani氏は「安定版リリースを今年中に出す目標は変わらない」としつつも、「確約はできない」と慎重な姿勢を見せています。
UIの書き換えについては、SvelteからVueやLitへの移行を検討していたようです。面白いのは、その理由が「フレームワークが将来的にメジャーリファクタリングやプロジェクト放棄をした場合に、自分一人でメンテナンスできるか」という懸念から来ていること。長期的にプロジェクトを「完成」としてメンテナンスモードに入れたいという考え方は、Supabaseのような積極的に機能追加を続けるBaaSとは対照的です。
オープンソースの持続可能性を考える
PocketBaseの件は、オープンソースプロジェクトの持続可能性についてあらためて考えさせられます。
GitHub SponsorsやOpen Collective、FLOSS Fundのような仕組みは増えてきていますが、実際に資金が開発者の手に届くまでには多くのハードルがあります。特に個人開発者にとっては、税務処理、国際送金、個人情報の管理など、コードを書くこと以外の負担が大きいんですよね。
一方で、PocketBaseのような人気プロジェクトでさえ安定した資金源を確保するのが難しいという現実は、あまり知られていないかもしれません。普段何気なく使っているオープンソースツールの多くが、こうした不安定な状況の中で維持されています。
他のオープンソース資金モデルとの比較
参考として、うまく機能している資金モデルもあります。たとえば、Let’s EncryptはISRG(Internet Security Research Group)という非営利団体が運営しており、企業スポンサーからの安定的な資金で運営されています。
また、DuckDBはDuckDB Foundation経由で資金を管理し、企業との契約を通じて収益を得ています。個人に依存しない組織的な構造が、こうしたプロジェクトの安定性を支えているわけです。
まとめ
PocketBaseのFLOSS Fund辞退は、個別のトラブルというよりも、オープンソース開発者が直面する資金調達の構造的な課題を象徴する出来事だと感じました。コードを書く能力と、国際的な資金を安全に受け取る能力はまったく別のスキルです。
詳細はGitHubのディスカッションで読めます。PocketBaseの安定版リリースが無事に実現することを願いつつ、オープンソースの持続可能性について引き続き注目していきたいですね。
