PostgreSQLを運用していると、「このクエリ、バックグラウンドで勝手に走ってくれないかな」と思う瞬間がありませんか。VACUUMやREINDEX、大量データのバックフィルなど、重い処理をクライアント接続で抱えたままだとアプリケーション側が詰まってしまいます。

そんな課題を解決してくれるのがpg_backgroundという拡張機能です。PostgreSQLのバックグラウンドワーカープロセスでSQLを非同期実行できるようにするもので、2026年2月にv1.6〜v1.8と立て続けにリリースされて注目を集めています。

pg_backgroundとは何か

pg_backgroundは、PostgreSQL内部のバックグラウンドワーカーとしてSQLコマンドを実行できる拡張機能です。dblinkのように別の接続を開くのではなく、サーバー内部のリソースを使って独自のトランザクションスコープで処理を走らせてくれます。

フルスケジューラーやジョブキューイングシステムではなく、あくまで「このSQLをバックグラウンドで走らせて、結果は後で受け取る」というシンプルなツールですね。個人的には、この割り切りが好きだなと感じました。余計な依存を増やさず、PostgreSQLの中だけで完結するのがいいところです。

なぜ本番環境で使いたくなるのか

pg_backgroundが刺さるユースケースは結構はっきりしています。

  • ノンブロッキング操作:長時間クエリでクライアント接続を占有しない
  • 自律トランザクション:呼び出し元のトランザクションとは独立してコミット・ロールバックできる
  • リソース分離:ワーカーのライフサイクルを明示的に制御(起動・結果取得・デタッチ・キャンセル)
  • サーバーサイド監視:v2 APIでワーカーの状態やエラーを一覧表示

具体的なパターンとしては、バックグラウンドでのVACUUM/ANALYZE/REINDEX、非同期のデータバックフィルや修復、監査ログの書き込み、「重い処理は後でやる」ワークフローなどが挙げられます。

v2 APIが推奨される理由

pg_backgroundは現在、v2 APIの利用が強く推奨されています。v1ではPIDだけでワーカーを識別していたのですが、長期運用ではPIDが再利用される可能性があって、意図しないワーカーを操作してしまうリスクがありました。

v2ではPIDに加えてcookieという識別子が導入されています。これによってPID再利用問題を回避できるようになりました。さらに、明示的なキャンセルとデタッチの区別、同期的な待機、リスト関数によるモニタリングなど、本番運用で必要な機能がしっかり揃っています。

ちなみに「デタッチはキャンセルではない」という点が重要です。デタッチはワーカーとの接続を切るだけで、ワーカー自体は処理を続けます。一方、キャンセルはワーカーの処理自体を中断させるものですね。

最近のリリースで何が変わったか

2026年2月に入ってv1.6、v1.7、v1.8と立て続けにリリースされており、本番環境での安定性が大幅に向上しています。

v1.6では、v2 APIの導入に加えて、DSMライフサイクルの改善、エラーハンドリングとメモリクリーンアップの強化が行われました。PostgreSQL 12〜18まで幅広く対応しています。

v1.7では、cookieの生成がpg_strong_random()による暗号学的に安全な方式に切り替わりました。また、長時間セッションでのメモリ膨張を防ぐ専用メモリコンテキストの導入、wait/cancelループでのCPU負荷軽減のための指数バックオフポーリングなど、地味ながら重要な改善が入っています。

インストールと運用上の注意点

インストール自体は標準的な拡張のビルドとCREATE EXTENSIONの手順ですが、一つ見落としがちなポイントがあります。バックグラウンドワーカーはmax_worker_processesを消費するという点です。

デフォルト値のまま運用していると、ワーカーの起動に失敗する可能性があるので、利用するワーカー数を見積もって意図的にサイズ設定する必要があります。この辺りはPostgreSQL 17の新機能と合わせてチェックしておくと良いかもしれません。

既存のジョブキューと何が違うのか

pg_cronやpgmqのようなジョブキューシステムとの違いが気になる方もいるかもしれません。pg_backgroundは「今このSQLを別プロセスで走らせて、結果は後で取る」という即時性に特化しているのが特徴です。

スケジュール実行やリトライ機能はありません。その分、導入のハードルが低く、追加のインフラも不要です。「もう一つジョブシステムを入れるほどでもないけど、この処理だけバックグラウンドで走らせたい」というケースにぴったりハマります。

データベース関連ではDuckDBのような分析特化DBも注目されていますが、OLTP環境でのバックグラウンド処理にはpg_backgroundの方が適していると感じました。

まとめ

pg_backgroundは、PostgreSQLの中だけでバックグラウンド非同期処理を実現できるシンプルな拡張機能です。v2 APIによるcookieベースの安全なワーカー管理、最近の連続リリースによる本番品質の安定化など、実運用に耐えうるレベルに成熟してきています。

重い処理でクライアント接続を占有してしまう問題に悩んでいる方は、まず開発環境で試してみる価値があると思います。公式リポジトリのドキュメントがかなり丁寧に書かれているので、セットアップで迷うことも少ないはずです。