折り紙って、子供の遊びだと思っていませんか。実は今、折り紙の折りパターンが工学の最前線で注目されています。14歳のMiles Wuさんが考案したMiura-ori(三浦折り)の実験が、その可能性を鮮やかに証明してみせました。

Miura-ori(三浦折り)とは何か

Miura-oriは、東京大学の三浦公亮名誉教授が1970年代に考案した折りパターンです。平行四辺形を繰り返し並べた構造で、一方向に引っ張るだけで全体が均一に展開するという特徴があります。もともとはNASAの人工衛星の太陽電池パネル展開に使われた技術なんですよね。

この折り方の面白いところは、コンパクトに畳めて、展開が簡単で、しかも構造的に強いという3つの特性を同時に持っている点です。普通の構造物だと、この3つのうちどれか1つは犠牲にしないといけないことが多いんですが、Miura-oriはそれを解決しています。

14歳が実証した驚異の強度

ニューヨーク在住の14歳、Miles Wuさんは6年以上折り紙を趣味にしてきた少年です。彼はThermo Fisher Scientific Junior Innovators Challengeという科学コンテストで、Miura-oriの強度を体系的にテストする研究を行いました。結果は最優秀賞(賞金25,000ドル)の受賞でした。

Wuさんは3種類の紙、3種類の平行四辺形の幅、3種類の角度、2種類の高さを組み合わせて、合計54パターン・108回の試行を実施しています。折り紙の上に重りを乗せて、潰れるまでどれだけ耐えられるかを測定したわけですね。

驚いたのは、自宅にある本を全部使い切っても重りが足りなくて、ご両親にエクササイズ用のウェイトを買ってもらったというエピソードです。最終的に、最も強い組み合わせでは自重の10,000倍以上の荷重に耐えることが分かりました。

意外だったのは「コピー用紙が最強」という結果

Wuさんの仮説は「小さく、鋭角でないパネルを、重い素材で作ると最も強い」というものでした。ところが実際には、パネルのサイズと角度については仮説通りだったものの、素材に関しては普通のコピー用紙が最も高い強度対重量比を示したそうです。

これは直感に反する結果ですよね。重い素材のほうが強そうに思えますが、Miura-oriの場合は折り目の精度と素材の均一性が重要で、コピー用紙がその条件を最も満たしていたということかもしれません。

災害支援への応用可能性

Wuさんがこの研究に取り組んだきっかけは、カリフォルニアの山火事やハリケーン・ヘレンなどの自然災害について学んだことだったそうです。現在の仮設テントや緊急用シェルターは「強度」「コンパクトさ」「展開の容易さ」のうち、すべてを兼ね備えたものがほとんどないという課題があります。

Miura-oriをベースにした構造なら、小さく折り畳んで輸送し、現場で素早く展開でき、しかも十分な強度を持つシェルターが作れる可能性があるわけです。実際に、レンズレスイメージングのような意外な素材活用の研究もそうですが、身近なものから革新的な技術が生まれるのは面白いですね。

折り紙工学は宇宙から医療まで広がっている

折り紙の工学応用は、Wuさんの研究だけにとどまりません。NASAのジェット推進研究所(JPL)では、折り紙パターンを使った太陽電池パネルや宇宙望遠鏡の遮光板が研究されています。

医療分野では、血管内に挿入するステントや、小さく畳んで体内に入れてから展開する手術用デバイスに折り紙構造が応用されているケースもあります。また、建築分野では可変形状の屋根構造やファサードにMiura-oriが使われた事例もあるようです。

Armのチップ技術のように、一見ニッチに見える技術が産業全体を変えることがあります。折り紙工学もまさにそういった技術の一つだと感じました。

まとめ

14歳の少年が折り紙で自重の1万倍を支える構造を実証したという話は、単なる「すごい子供がいた」というニュースではないと思います。Miura-oriという折りパターンが持つ工学的ポテンシャルを、体系的な実験で示した研究として価値があります。

災害支援から宇宙開発、医療まで、折り紙工学の応用範囲は今後さらに広がっていくでしょう。身近な「紙を折る」という行為が、最先端の工学課題を解決する鍵になるかもしれない。そう考えると、折り紙の見方がちょっと変わりませんか。