「スマホの見すぎで目が悪くなる」という話は、もはや常識のように語られています。しかし、2026年2月にCell Reportsに掲載された最新の研究は、近視(マイオピア)の原因がスクリーンそのものではなく、「室内での目の使い方」にあるという新しい仮説を提示しています。
日本でもスマホ普及とともに近視が増加していると感じている方は多いと思いますが、この研究が示す視点はかなり興味深いものでした。
近視は世界的な「流行病」になっている
近視は今や世界的な健康問題です。アメリカとヨーロッパでは若年層の約50%、東アジアの一部では約90%が近視だと報告されています。日本も例外ではなく、文部科学省の調査では小中学生の視力低下が年々進行しています。
遺伝の影響はもちろんありますが、わずか数世代でここまで急増するのは環境要因なしには説明できないんですよね。
スクリーンではなく「近距離×暗い環境」が問題
SUNY College of Optometryの研究チームは、これまで別々の要因として語られてきた「近くを見る作業」「屋内の暗い照明」「スクリーン時間」を統一的に説明するメカニズムを提案しました。
ポイントは網膜に届く光の量です。
明るい屋外では瞳孔が収縮しますが、それでも十分な光が網膜に届きます。一方、暗い室内で近くの対象を集中して見ると、瞳孔は開きますが近距離焦点のために水晶体が厚くなり、結果的に網膜への光の入り方が変わるということです。
つまり、問題はスクリーンの「ブルーライト」でも「画面を見る行為」でもなく、暗い室内で長時間近くを凝視する行為そのものが眼球の成長に影響を与えているという仮説ですね。
なぜ屋外活動が近視を防ぐのか
「子供は外で遊びなさい」という昔からの教えに、科学的な裏付けがつきつつあります。屋外の光は室内照明の数十倍から数百倍の明るさがあり、瞳孔を十分に収縮させます。
また、屋外では遠くを見る機会が自然に増えるため、水晶体の調節筋がリラックスした状態を保てます。この「明るい光+遠距離視」の組み合わせが、眼球の過度な成長を抑制する効果があると考えられています。
エンジニアやデスクワーカーへの示唆
この研究結果は、日常的にスクリーンの前で長時間作業するエンジニアやデスクワーカーにとって特に重要です。
いくつかの対策が考えられます。
- 作業環境の照明を明るくする:暗い部屋でモニターだけ光っている状態は最も良くないようです
- 20-20-20ルールを実践する:20分ごとに20フィート(約6m)先を20秒間見る習慣
- 昼休みに外に出る:たとえ曇りの日でも屋外の光量は室内を大きく上回ります
- デスクライトを追加する:モニター周辺の明るさを確保するだけでも違いが出る可能性があります
ブルーライトカット眼鏡は意味があるのか
この研究の文脈で考えると、ブルーライトカット眼鏡の効果には疑問符がつきます。問題がブルーライトではなく光量と焦点距離にあるのだとすれば、光をカットするアプローチはむしろ逆効果かもしれません。
実際、2024年のコクラン・レビューでもブルーライトカットレンズの近視予防効果は確認されていないと報告されています。
認知疲労がエンジニアの生産性に与える影響と合わせて考えると、長時間のデスクワークは目だけでなく脳にもダメージを与えているわけで、定期的な休憩と環境改善の重要性を改めて感じますね。
まとめ
近視の原因は「スクリーン」ではなく「暗い室内で近くを長時間見る行為」にあるという新しい仮説は、対策の方向性を変える可能性があります。照明を明るくし、意識的に遠くを見る時間を作り、できるだけ屋外で過ごす。シンプルですが、これが現時点で最も科学的根拠のある近視対策と言えそうです。
参考リンク: