MicroGPTが注目される背景
大規模言語モデル(LLM)がここまで普及した2026年。しかし、「GPTって中で何をやっているの?」と聞かれて、きちんと答えられる人はそう多くありません。
そんな疑問に応えてくれるのが、MicroGPTというプロジェクトです。ブラウザ上で動作する小さなGPTモデルを用意し、トークンがどう処理され、Attentionがどう働くのかをリアルタイムで可視化してくれます。
とはいえ、「可視化ツール」と聞くとハードルが高そうに感じるかもしれません。実際に触ってみると、プログラミングの知識がなくても直感的に操作できるので安心してください。
MicroGPTの仕組みをざっくり解説
MicroGPTは、GPT-2をベースにした軽量モデルをWebAssemblyで動かしています。サーバーに依存せず、ブラウザだけで完結するのが特徴ですね。
具体的には、以下のような要素が可視化されます。
- トークン分割:入力テキストがどうトークンに分解されるか
- Embedding層:各トークンがベクトル空間でどう表現されるか
- Attention機構:どのトークンが他のトークンにどれだけ注意を払っているか
- 出力確率:次のトークン候補とその確率分布
とくにAttentionの可視化が秀逸で、色の濃さでトークン間の関係性が一目でわかります。「なるほど、この単語を予測するときにあの単語を参照しているのか」という発見が次々に得られるでしょう。
なぜ今「GPTの可視化」が重要なのか
AIの活用が進むにつれて、「ブラックボックスのまま使う」ことへの不安や批判が増えています。とくにビジネスの場面では、AIの判断根拠を説明できないと導入が進まないケースが少なくありません。
したがって、AIエージェントの設計パターンを理解するのと同様に、モデルの内部動作を把握しておくことは、これからのエンジニアにとって必須スキルになりつつあります。
さらに、教育現場でも注目されています。大学のAI講義で「Transformerの仕組み」を説明するとき、数式だけでは学生の理解が追いつかないことがあります。MicroGPTのような可視化ツールがあれば、抽象的な概念を具体的に示せるわけです。
MicroGPTの使い方
使い方は非常にシンプルです。公式サイトにアクセスして、テキストを入力するだけ。
初回はモデルのダウンロードに少し時間がかかりますが、一度読み込めば快適に動作します。ブラウザのローカルで処理されるため、入力内容が外部に送信される心配もありません。プライバシーの観点でも安心ですね。
操作としては、テキスト入力後に「Generate」ボタンを押すと、トークン生成のプロセスがステップごとに表示されます。各ステップをクリックすると、そのタイミングでのAttentionマップや確率分布を確認できる仕組みです。
MicroGPTで学べること
このツールを触っていると、いくつかの重要な気づきが得られます。
まず、トークナイザーの挙動。日本語話者にはあまり馴染みがないかもしれませんが、英語でも単語の区切り方は直感に反することがあります。たとえば「unbelievable」が「un」「believ」「able」のように分割されるのを実際に見ると、BPE(Byte Pair Encoding)の仕組みが腑に落ちるはずです。
次に、Attentionの偏り。すべてのトークンに均等に注意が向けられるわけではなく、文脈的に重要なトークンに集中する様子が視覚的に確認できます。これは、LLMの性能評価を考えるうえでも示唆に富んでいます。
そして、温度パラメータの影響。温度を変えると出力の多様性がどう変化するかを、確率分布のグラフで直接確認できるのも面白いポイントでしょう。
類似ツールとの比較
GPTの可視化ツールはMicroGPTだけではありません。たとえば、Brendan Bycroft氏のLLM可視化も有名です。
ただし、MicroGPTの強みは「実際にモデルが動いている」点にあります。多くの可視化ツールは事前に計算した結果を表示するだけですが、MicroGPTはリアルタイムで推論を実行し、その過程を見せてくれます。この違いは意外と大きいですね。
一方で、MicroGPTのモデルサイズはかなり小さいため、ChatGPTのような高品質な出力は期待できません。あくまで「仕組みを学ぶためのツール」として使うのが正解です。
MicroGPTの技術的な特徴
開発者のBoratto氏によると、MicroGPTは以下の技術スタックで構成されています。
- モデル: GPT-2 Small(124Mパラメータ)の量子化版
- 推論エンジン: WebAssembly(ONNX Runtime Web)
- フロントエンド: React + D3.jsによるインタラクティブな可視化
- データフロー: 各レイヤーの中間出力をキャプチャしてリアルタイム描画
WebAssemblyを採用することで、サーバーサイドのGPUなしでもブラウザ内で推論を完結させています。モバイルデバイスでも動作するのは嬉しいところです。
こんな人におすすめ
MicroGPTは、以下のような方にとくにおすすめできます。
- AIに興味があるけど、内部の仕組みがよくわからない初学者
- Transformerの論文を読んだけど、イメージが湧かないエンジニア
- AI講義で学生にわかりやすく説明したい教育者
- MCPサーバー開発などLLM関連の開発に携わる実務者
逆に、すでにTransformerの仕組みを熟知している上級者には物足りないかもしれません。それでも、人に説明するときのデモツールとしては重宝するでしょう。
まとめ
MicroGPTは、GPTの「中身」をブラウザで手軽に覗けるユニークなツールです。Attentionの動きやトークン処理の流れを目で見て理解できるのは、論文や教科書では得られない体験でしょう。
AIを使うだけでなく、その仕組みを理解したい。そんな知的好奇心を持つ方にこそ、ぜひ一度触ってみてほしいツールです。
