「子どものスマホ利用時間を制限すれば、SNS依存は防げるはず」——多くの親がそう考えているのではないでしょうか。ところが、Meta自身が実施した内部研究「Project MYST」の結果は、その常識を覆すものでした。
この研究結果は、2026年2月にロサンゼルス郡上級裁判所で始まったSNS依存症訴訟の中で明らかになったものです。原告側の弁護士がMetaの内部資料として提示したもので、その内容がかなり衝撃的だったんですよね。
Project MYSTとは
Project MYSTは「Meta and Youth Social Emotional Trends」の略で、Metaがシカゴ大学と共同で実施した調査プロジェクトです。1,000人のティーンエイジャーとその親を対象に、SNS利用パターンと親の監視の関係を調べました。
この調査で出た結論は明快です。「親の監視や家庭環境の要因は、ティーンのソーシャルメディア利用への注意力にほとんど関連しない」というものでした。具体的には、以下の方法を試しても効果が見られなかったそうです。
- アプリ内のペアレンタルコントロール機能の利用
- スマートフォンの利用時間制限の設定
- 家庭内ルールによるSNS利用の制限
- 親が直接見守る形での監視
親とティーンの双方に調査した結果、どちらの回答からも「親の監視がティーンのSNS利用の自制力に関連している」というデータは出なかったとのことです。
なぜ親の監視が効かないのか
この結果を踏まえると、SNSの「依存性」の根本原因はユーザー側の意志ではなく、プロダクト設計にあるという見方が強まります。原告側の訴状では、SNSプロダクトには以下のような「設計上の欠陥」があると主張されています。
- ユーザーをスクロールし続けさせるよう最適化されたアルゴリズムフィード
- ドーパミン分泌を操作する「いいね」や通知の間欠的報酬設計
- アプリに戻ることを促す絶え間ないプッシュ通知
- 実効性が低いペアレンタルコントロール機能
時間制限を設けても、制限が解除された瞬間にアプリが「引き戻す」仕組みが動いているなら、根本的な解決にはならないわけです。これはかなり考えさせられるポイントだと感じました。
訴訟の全体像
今回の裁判は「KGM」というイニシャルで識別される原告が、Meta、YouTube、ByteDance(TikTok)、Snapを訴えたものです。TikTokとSnapは裁判開始前に和解しており、現在はMetaとYouTubeが被告として残っています。
原告側は、SNS依存によって不安障害、うつ病、摂食障害、自傷行為、自殺念慮などの深刻な被害を受けたと主張しています。この裁判は2026年に予定されている複数の「ランドマーク裁判」の一つで、SNS企業の若年ユーザーへの対応方針や規制当局の今後の動きに大きな影響を与えることになりそうです。
SNS依存症訴訟の記事でも取り上げたザッカーバーグの証言とも関連しており、一連の裁判の流れを把握しておくと全体像が掴みやすいですね。
Instagram責任者の反論
Instagramの責任者Adam Mosseri氏は証言台でProject MYSTの結論に反論しています。ただし、Meta自身の研究チームが出した結論であるため、説得力がどこまであるかは疑問が残るところです。
重要なのは、Metaがこの研究結果を自ら公表しなかったという点ですね。裁判の証拠開示手続きで初めて明るみに出た内部資料だったわけで、「知っていたのに公表しなかった」という構図が企業の透明性に対する信頼をさらに損なう結果になっています。
日本への示唆
日本でもティーンのSNS利用は社会問題になりつつあり、総務省や文部科学省がガイドラインを策定しています。しかし、その多くは「家庭での管理」が前提です。
もしProject MYSTの結果が示すように親の監視が効果的でないなら、規制のアプローチ自体を見直す必要があるかもしれません。Discordの年齢認証問題やMetaとGoogleの依存症裁判の動きとも合わせて考えると、プラットフォーム設計への規制介入が今後の焦点になりそうです。
まとめ
Metaの内部研究Project MYSTは、「親が管理すればSNS依存は防げる」という前提に疑問を投げかけるものでした。1,000人規模の調査で親の監視とティーンのSNS自制力に関連が見られなかったという結果は、今後のSNS規制議論に大きな影響を与えるはずです。
ペアレンタルコントロールが「あれば安心」ではなく、プロダクト設計の根本に問題があるとすれば、対策の方向性を変える必要があるのかもしれませんね。
参考リンク: