LLM(大規模言語モデル)を活用したアプリケーションを開発しようとすると、プロンプト管理、外部データ連携、ツール呼び出し、会話履歴の保持など、実装すべきことが思った以上に多いことに気づきます。

LangChainは、こうしたLLMアプリ開発に必要な機能をモジュール化して提供するオープンソースフレームワークです。2022年10月にHarrison Chaseが公開して以来、急速にコミュニティが拡大し、2026年現在ではLLMアプリ開発のデファクトスタンダード的な存在になっています。

この記事では、LangChainの主要コンポーネントから実際の使い方まで、ひと通り整理してみました。

LangChainが解決する課題

LLMのAPIを直接叩くだけなら数行のコードで済みます。しかし、実用的なアプリを作ろうとすると、様々な課題にぶつかりますね。

たとえば、LLMに最新情報を参照させたい場合はRAG(検索拡張生成)の実装が必要です。複数のツールを状況に応じて使い分けるエージェントを作りたければ、ツール選択のロジックやエラーハンドリングも考えなければなりません。

LangChainは、これらの「LLMアプリ開発でよくあるパターン」を抽象化して、組み合わせ可能なコンポーネントとして提供してくれます。車輪の再発明をせずに、アプリケーション固有のロジックに集中できるのが最大のメリットです。

LangChainの主要コンポーネント

Models(モデル連携)

OpenAI、Anthropic、Google、Mistralなど、主要なLLMプロバイダーとの統一的なインターフェースを提供します。モデルを切り替えてもコードの変更が最小限で済むのは、開発のスピード感を考えると非常にありがたいところです。

from langchain_openai import ChatOpenAI
from langchain_anthropic import ChatAnthropic

# モデルの切り替えが簡単
llm = ChatOpenAI(model="gpt-4o")
# llm = ChatAnthropic(model="claude-sonnet-4-5-20250514")

Prompts(プロンプト管理)

プロンプトテンプレートを変数付きで管理できます。Few-shot例の動的挿入やプロンプトのバージョン管理も可能で、プロンプトエンジニアリングの試行錯誤がかなり楽になりました。

Chains(チェーン)

複数の処理を直列・並列に繋げるための仕組みです。LangChain Expression Language(LCEL)という独自の記法で、パイプラインを宣言的に組み立てられます。

from langchain_core.prompts import ChatPromptTemplate
from langchain_openai import ChatOpenAI
from langchain_core.output_parsers import StrOutputParser

prompt = ChatPromptTemplate.from_template("{topic}について簡潔に説明して")
chain = prompt | ChatOpenAI() | StrOutputParser()
result = chain.invoke({"topic": "量子コンピューティング"})

Retrievers(検索・RAG)

ベクトルデータベースとの連携モジュールが充実しています。Pinecone、Weaviate、Chroma、FAISSなど、主要なベクトルDBをほぼ網羅していますね。ドキュメントの分割・埋め込み生成・類似検索のパイプラインを数行で構築できるのは、RAGアプリ開発の生産性を大きく上げてくれます。

Agents(エージェント)

LLMが自律的にツールを選択して実行する「AIエージェント」を構築するための機能です。Web検索、計算、データベースクエリなど、様々なツールを定義して、LLMに判断を委ねることができます。

LangChainのエコシステム

2026年現在、LangChainはコアライブラリだけでなく、周辺ツールも充実してきました。

LangSmithはLLMアプリケーションのトレーシング・評価・モニタリングプラットフォームです。プロンプトの入出力やレイテンシを可視化できるので、本番運用には欠かせないツールになっています。

LangGraphはステートフルなマルチエージェントワークフローを構築するためのライブラリで、より複雑なエージェント間の協調動作を実現できます。Microsoft Agent Frameworkと似た領域をカバーしていますが、LangChainエコシステムとのシームレスな統合が強みですね。

LangServeはLangChainのチェーンをREST APIとしてデプロイするためのツールです。FastAPIベースで、本番環境へのデプロイがスムーズに行えます。

LangChainを始めるための環境構築

Python環境があれば、すぐに始められます。uvを使うとパッケージ管理が高速で快適です。

# インストール
pip install langchain langchain-openai langchain-community

# 環境変数にAPIキーを設定
export OPENAI_API_KEY="your-api-key"

公式ドキュメント(LangChain Docs)にチュートリアルが豊富に用意されているので、まずはそこから始めるのがおすすめです。

LangChainの課題と注意点

便利なフレームワークですが、いくつか把握しておきたいポイントもあります。

一つは抽象化のオーバーヘッドです。シンプルなAPIコール1回で済む用途にLangChainを持ち込むと、かえってコードが複雑になることがあります。フレームワークの恩恵を受けるのは、複数のコンポーネントを組み合わせるような中〜大規模なアプリケーションからだと感じています。

もう一つはバージョンアップの頻度です。開発が非常に活発なので、破壊的変更が入ることがあります。特にv0.1からv0.2への移行では、import pathが大きく変わったので、既存コードの修正が必要になりました。バージョンを固定して運用することをおすすめします。

まとめ

LangChainは、LLMアプリケーション開発における「配管工事」を大幅に効率化してくれるフレームワークです。RAG、エージェント、ツール連携といった機能をモジュール的に組み合わせられるので、アイデアからプロトタイプまでのスピードが格段に上がります。

MCP(Model Context Protocol)との連携も進んでいて、今後ますますエコシステムが広がっていくことが予想されます。LLMを使ったアプリケーションを作ってみたい方は、まずLangChainから触ってみるのが良いスタート地点になるのではないでしょうか。