開発者なら一度は見たことがあるであろう、あのgit-flowのブランチダイアグラム。2010年にVincent Driessen氏が作成した有名な図を、MicrosoftがどうやらAI画像生成ツールで模倣し、公式のLearnポータルに掲載していたことが発覚しました。
「continvoucly morged」という明らかなAI生成の誤字が決め手となり、BlueskyやHacker Newsで大きな話題になっています。
何が起きたのか
2010年、Vincent Driessen氏は「A successful Git branching model」というブログ記事を公開しました。この記事に添えられたブランチダイアグラムは、色使い、カーブ、レイアウトに至るまで丁寧にデザインされたもので、書籍、カンファレンス、チームのWiki、YouTube動画など、あらゆる場所で使われてきました。
Driessen氏自身もソースファイルを公開しており、自由に使ってもらうことを歓迎していたそうです。ところが、15年以上経った今になって、Microsoftの公式ドキュメントポータル「Learn」に、このダイアグラムをAI画像生成ツールで再生成したと思われる図が、クレジットなしで掲載されていたことが判明しました。
「continvoucly morged」が示すAIスロップの実態
AI生成された図は、元のダイアグラムの大まかな形状を保ちつつも、品質は著しく劣化していました。具体的には以下のような問題が確認されています。
- 矢印が欠落していたり、間違った方向を向いている
- ブランチの色分けやレーン設計が崩れて読みにくくなっている
- 「continuously merged」が「continvoucly morged」と表示されている
この「continvoucly morged」が決定的な証拠となり、AI画像生成ツールによるアーティファクトだと即座に見抜かれました。AIスロップがオープンソースを壊し始めている問題は以前から指摘されていましたが、今回はMicrosoftという大企業が当事者になったことで注目度が一気に上がりました。
作者の反応:悲しいのは盗用ではなくプロセスの欠如
Driessen氏のブログでの反応が印象的でした。氏が問題視しているのは「誰かが自分のダイアグラムを使ったこと」ではなく、そのプロセスの雑さだそうです。
丁寧に作られた作品をAIに通して「指紋を洗い流し」、自社のものとして公開する。しかもその結果は元よりも明らかに劣化している。これは「インスピレーションを受けて発展させた」のではなく、「うまくいっていたものを取って悪くした」行為だと氏は指摘しています。
特に気になったのは、「今回は元のダイアグラムが十分に有名で、かつAIスロップが明らかだったから見抜けた。しかし今後、もっと巧妙なAI生成が増えれば、こうした盗用は認識できなくなるだろう」という懸念です。
AI時代のコンテンツ制作で問われること
この事件は、AI時代のコンテンツ制作における重要な問いを投げかけています。
- AIによる「ロンダリング」: 既存の作品をAIに通すことで、著作権的にグレーな状態を作り出せてしまう
- 品質管理の欠如: 学習リソースとして使われるドキュメントに、校正すらされていないAI生成物が紛れ込んでいる
- クレジットの重要性: オープンソースの精神で共有されたものを、出典なしで利用することの問題
AIコンテンツの透かし・ラベル義務化の議論が進んでいますが、こうした事例を見ると、技術的な対策だけでなく組織のプロセスや倫理観も問われていることがわかります。
git-flowとは何だったのか
ちなみに、git-flow自体は2010年代のGit開発ワークフローを定義した影響力の大きいモデルです。feature、develop、release、hotfix、mainの5つのブランチを使い分けるアプローチで、多くの開発チームに採用されました。
ただし、Driessen氏自身が2020年に「すべてのプロジェクトに適しているわけではない」と注記を追加しており、継続的デリバリーを行うWebアプリケーションにはよりシンプルなGitHub Flowの方が適している場合もあると述べています。
まとめ:AIスロップに対する意識を持つ時代
「continvoucly morged」は笑い話で済みますが、その背景にある問題は深刻です。AIツールが便利になればなるほど、「とりあえずAIに通してコンテンツを量産する」誘惑は増していきます。
開発者としてもコンテンツ制作者としても、AI生成物の品質チェックと出典の明記は当たり前のマナーとして意識していきたいところですね。
AI時代のコンテンツ問題に関心がある方は、セマンティック・アブレーションの解説やGitHub PR無効化機能の記事もあわせてご覧ください。
