セキュリティに興味のある方なら、一度は「リバースエンジニアリング」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。コンパイル済みのプログラムを解析して、内部の動作を理解する技術です。この分野で今最も注目されている無料ツールが、NSA(米国家安全保障局)が開発・公開しているGhidraなんですよね。

Ghidraとは — NSAが作ったリバースエンジニアリングツール

Ghidra(ギドラ)は、2019年にNSAがオープンソースとして公開したソフトウェアリバースエンジニアリング(SRE)フレームワークです。GitHubで公開されており、誰でも無料で利用できます。

もともとNSAが内部のサイバーセキュリティ業務で使用していたツールで、マルウェア解析やネットワーク脆弱性の調査に活用されてきました。それを一般公開したわけですから、かなりの本格派ツールといえます。

Ghidraの主要機能

Ghidraが提供する機能は多岐にわたります。主要なものを見ていきましょう。

逆アセンブル・逆コンパイル

バイナリファイルをアセンブリ言語に変換する逆アセンブル機能に加えて、C言語風の疑似コードに変換する逆コンパイル機能も備えています。これにより、アセンブリ言語に精通していなくても、ある程度プログラムの処理内容を把握できるようになります。

マルチプラットフォーム対応

Windows、macOS、Linuxの各OS上で動作します。また、解析対象もx86、ARM、MIPS、PowerPCなど、非常に幅広いプロセッサアーキテクチャに対応しています。IoTデバイスのファームウェア解析なども可能です。

スクリプティング・拡張機能

JavaやPythonでスクリプトを書いて、解析作業を自動化できます。独自のプラグインやエクステンションを開発することも可能なので、特定の解析ニーズに合わせたカスタマイズが柔軟に行えます。

Ghidra vs IDA Pro — 何が違うのか

リバースエンジニアリングの世界では、長年IDA Proがデファクトスタンダードでした。ただしIDA Proは商用ソフトウェアで、プロフェッショナル版のライセンスは数千ドルに達します。

一方、Ghidraは完全無料かつオープンソース。機能面でもIDA Proに引けを取らないレベルに成長しています。特に逆コンパイル機能は、IDA Proの有料アドオンであるHex-Rays Decompilerに匹敵する精度を持っているとの評価もあります。

もちろん、IDA Proには長年蓄積されたエコシステムやプラグインの充実度という強みがあります。ただ、個人の学習やセキュリティリサーチの入門としては、Ghidraで十分すぎるほどの機能が揃っていると感じました。

Ghidraのインストール方法

Ghidraの導入はシンプルです。必要なのはJDK 21(64bit版)だけ。Adoptiumからダウンロードできます。

その後、GitHubのリリースページからGhidraのzipファイルをダウンロードして展開するだけ。インストーラは不要で、展開先のghidraRunスクリプトを実行すれば起動します。

Ghidraの活用シーン

Ghidraはさまざまな場面で活用されています。いくつか具体的なユースケースを紹介します。

マルウェア解析Paragonスパイウェアのような悪意あるソフトウェアの動作を理解し、防御策を講じるために使われます。

脆弱性研究iOSのゼロデイ脆弱性のように、ソフトウェアのセキュリティホールを発見するための解析に役立ちます。

CTF(Capture The Flag):セキュリティ競技のバイナリ問題を解く際のメインツールとしても広く使われています。

IoTファームウェア解析:組み込みデバイスのファームウェアを解析して、セキュリティ上の問題がないか検証する用途でも重宝します。

まとめ

GhidraはNSAが開発した本格的なリバースエンジニアリングツールでありながら、完全に無料で利用できるという、かなり稀有な存在です。セキュリティの学習を始めたい方にも、プロの研究者にも幅広くおすすめできます。

最近はChrome拡張機能によるスパイウェア問題など、ソフトウェアの内部動作を理解することの重要性が増しています。リバースエンジニアリングのスキルは、もはやセキュリティ専門家だけのものではなくなりつつあるのかもしれません。