富士通LLM「Takane」がソフトウェア開発の全工程をAIで自動化

富士通が2026年2月17日、ソフトウェア開発の全工程をAIで自動化する試み「AI-Driven Software Development Platform」を発表しました。同社がカナダのAI企業Cohereと共同開発した大規模言語モデル「Takane」をはじめとする複数のAI技術を組み合わせたもので、一部の実証実験では生産性が従来の100倍に達したとのことです。

「100倍」という数字にはさすがに驚きましたが、実際にどんな仕組みなのか、そしてどこまで現実的なのか。詳しく見ていきましょう。

AI-Driven Software Development Platformの3つの柱

このプラットフォームは、大きく3つの要素で構成されています。

1. 法令変更に基づくシステム改修の自動提案

日本企業のシステム開発で大きな負担になっているのが、法改正への対応です。税制改正、労働法の変更、個人情報保護法の改定――こうした法令変更のたびに、既存システムの改修が必要になります。

Takaneベースのプラットフォームは、法令変更の内容を自動で読み取り、影響を受けるシステムのコードや仕様を特定。改修案まで自動で提案する機能を備えています。

2. 品質検証を伴う自律的なコード生成

単にコードを生成するだけでなく、生成したコードの品質を自律的に検証するプロセスが組み込まれている点が特徴的です。AIコーディングの品質評価は業界全体の課題ですが、富士通は独自のAIエージェント技術でこの問題に取り組んでいます。

3. テスト工程の自動化

要件定義から設計、実装、そしてテストまでを一気通貫で自動化。特にテスト工程はソフトウェア開発のコスト全体の30〜50%を占めると言われており、ここを効率化できるインパクトは非常に大きいと考えられます。

「生産性100倍」は本当か?実証実験の中身

気になる「100倍」の根拠ですが、2024年度の法改正に伴うソフトウェア改修作業を対象にした実証実験で示された数字です。約300件の改修案件のうち1件を対象に検証を行い、従来の工数と比較して生産性が100倍に向上したとアピールしています。

ただし、これはあくまで限定的な条件下での結果である点には注意が必要でしょう。法令改修のように、変更内容が明確でパターン化しやすい作業はAIの得意分野です。すべてのソフトウェア開発で100倍になるわけではないはずです。

とはいえ、一部の工程で劇的な効率化が実現できること自体は、十分にインパクトのある成果だと感じます。

独自LLM「Takane」とは

Takaneは、富士通がカナダのAI企業Cohereと共同で開発した大規模言語モデルです。日本語に強い点が大きな特徴で、特に日本のビジネス文書や法令文書の理解に優れた性能を発揮するとされています。

海外のLLMがそのまま日本語に対応できるケースは増えていますが、法令文書のような専門性の高い文書を正確に処理するには、やはり日本語に特化したトレーニングが重要になってきます。この点でTakaneは独自のポジションを持っていると言えるでしょう。

2026年度中に全67医療・行政分野へ展開予定

富士通は2026年1月から、自社の「デジタル新生サービス」の法令対応ソフトウェア改修にこのプラットフォームを実適用し始めています。26年度中には、富士通Japan(旧・富士通マーケティング)が提供する全67の医療・行政分野のソフトウェアの法令対応にも活用する計画です。

さらに将来的には、技術や製品、流通といった他の分野にも展開する方針を示しています。

「AI-Ready Engineering」という新しい考え方

興味深いのは、富士通がこのプラットフォームの展開にあたって「AI-Ready Engineering」という概念を打ち出している点です。これは、AIによるシステムの運用・監視の信頼性を高めるために、既存のデータやシステム構造を整備する取り組みを指します。

つまり、AIを導入する前段階として「AIが扱いやすい状態」にデータを整えることが重要だという考え方ですね。AIエージェントの設計パターンを考える上でも、この「データの整備」は見落とされがちですが非常に重要なポイントです。

日本企業のAI活用は新しいフェーズへ

富士通の今回の発表は、日本企業のAI活用が「チャットボット」や「単純な生成AI」から、業務プロセス全体の自動化へとステージが変わりつつあることを象徴しています。

特に、法令対応という日本特有の課題にAIを適用している点は注目に値します。海外のAI技術をそのまま持ってくるのではなく、日本のビジネス環境に合わせた独自の活用法を模索する動きは、今後さらに加速していくのではないでしょうか。

AIエージェントの開発手法が急速に進化する中、富士通のような大手SIerがどこまでAI自動化を実用レベルに引き上げられるか。引き続き注目していきたいところです。

参考:富士通公式サイトCohere公式サイトITmedia AI+