「コンポーネントがページを殺す」——この刺激的なフレーズが、フロントエンド開発者の間で議論を巻き起こしている。従来のページベースのWebアーキテクチャから、コンポーネント中心の設計へとシフトが加速する中、そのメリットとリスクについて考えてみたい。
ページベースの設計は限界を迎えている
Webが生まれた当初、サイトは「ページ」の集合体だった。トップページ、会社概要、お問い合わせ。URLごとに1つのHTMLファイルが対応し、ナビゲーションはページ間の遷移だった。
しかし、現代のWebアプリケーションはこの構造に収まらない。たとえば、Notionのようなツールでは、サイドバー、エディタ、コメント欄がそれぞれ独立して動作する。ページ全体をリロードする設計では、こうしたインタラクティブな体験は実現できない。
そのため、React、Vue、Svelteといったフレームワークは、UIを「コンポーネント」という再利用可能な部品に分解するアプローチを採用している。ボタン、カード、モーダル——すべてが独立したコンポーネントとして定義され、組み合わせてUIを構築する。
コンポーネント駆動開発が主流になった理由
コンポーネント駆動開発(Component-Driven Development)が支持される理由は明確だ。
第一に、再利用性が高い。一度作ったボタンコンポーネントは、サイト内のどこでも使い回せる。デザインの一貫性が保たれ、修正も1箇所で済む。
第二に、チーム開発との相性がいい。コンポーネント単位で担当を分けられるため、大規模プロジェクトでも並行作業がしやすい。Storybookのようなツールを使えば、コンポーネントを個別にプレビュー・テストできる。
第三に、テストが書きやすい。コンポーネントは入力(props)と出力(レンダリング結果)が明確なため、ユニットテストとの相性が抜群だ。
「ページが死ぬ」とはどういうことか
ここで言う「ページの死」は、物理的にページが消えるという意味ではない。ルーティングは依然として存在するし、URLも残る。変わるのは、ページの「役割」だ。
従来、ページはコンテンツの最小単位だった。しかしコンポーネントアーキテクチャでは、ページは単なる「コンポーネントの配置場所」に格下げされる。ロジックも状態管理もコンポーネント側に移り、ページファイルは薄いラッパーになる。
Next.jsのApp RouterやRemixの設計思想を見ると、この流れは明らかだ。レイアウト、ローディング状態、エラーハンドリング——すべてがコンポーネントレベルで管理される。ページは「URLとコンポーネントツリーを紐づけるもの」に過ぎなくなっている。
コンポーネント過剰の落とし穴
一方で、コンポーネント化を推し進めすぎることのリスクも指摘されている。
まず、「コンポーネント地獄」の問題がある。何でもかんでもコンポーネントに分割した結果、ファイル数が膨大になり、コードの追跡が困難になるケースだ。ボタンの中にアイコンコンポーネント、その中にSVGコンポーネント……という入れ子構造が深くなると、かえって可読性が落ちる。
さらに、パフォーマンスへの影響も見逃せない。コンポーネントが増えるほど、仮想DOMの差分計算やレンダリングのオーバーヘッドが大きくなる。特にモバイル端末では、この影響が顕著に現れることがある。
また、SEOとの兼ね合いも重要だ。クライアントサイドレンダリングに依存しすぎると、検索エンジンのクローラーがコンテンツを正しく認識できない場合がある。この問題に対しては、SSR(サーバーサイドレンダリング)やISR(インクリメンタル静的再生成)で対応するのが現在のベストプラクティスだ。
Server Componentsという新たな選択肢
React Server Components(RSC)は、この議論に新たな視点を加えた。サーバー側でレンダリングされるコンポーネントと、クライアント側で動的に振る舞うコンポーネントを明確に分離する設計だ。
これにより、JavaScriptのバンドルサイズを削減しつつ、コンポーネントベースの開発体験を維持できる。データ取得もコンポーネント内で直接行えるため、APIレイヤーの設計がシンプルになる。
ただし、RSCはまだ成熟途上だ。デバッグの難しさやエコシステムの対応状況など、本番環境での運用には注意が必要な点も残っている。
実務でのバランスの取り方
理想は、「ページの概念」と「コンポーネントの柔軟性」を両立させることだ。具体的には、以下のようなガイドラインが参考になる。
- コンポーネントの粒度は「再利用するかどうか」で決める
- 一度しか使わないUIは、無理にコンポーネント化しない
- 状態管理はできるだけローカルに保つ(グローバル状態は最小限に)
- パフォーマンス計測を定期的に行い、ボトルネックを特定する
「すべてをコンポーネントにすべき」という教条主義に陥らず、プロジェクトの規模と要件に合わせて使い分けるのが現実的だ。
まとめ
コンポーネント駆動開発は、現代のフロントエンド開発において欠かせないアプローチになった。ページの役割は変わりつつあり、UIの主役はコンポーネントに移っている。
しかし、「ページを殺す」のは手段であって目的ではない。ユーザーにとって快適な体験を提供すること、そして開発チームにとって保守しやすいコードベースを維持すること。この2つのバランスを取りながら、コンポーネントの力を活かしていくのが、2026年のフロントエンド開発者に求められるスキルだろう。