Apple SiliconでLinuxを動かすプロジェクト「Asahi Linux」が、ついにUSB-C経由のディスプレイ出力に対応しました。2026年2月にリリースされたLinux 6.19カーネルの進捗レポートで発表された内容で、プロジェクト開始から5年越しの大きなマイルストーンです。

この記事では、Asahi Linuxの最新進捗とUSB-Cディスプレイ対応の技術的な背景、そしてM3チップ対応の動きについてまとめてみました。

Asahi Linuxとは?Apple SiliconでLinuxを動かす挑戦

Asahi Linuxは、AppleのM1/M2/M3チップを搭載したMacでLinuxを動作させることを目指すオープンソースプロジェクトです。2021年のプロジェクト開始以来、シリアルポートでの「Hello World」から始まり、現在ではLinuxエコシステムで最も充実したデスクトップグレードのAArch64プラットフォームの一つにまで成長しています。

ところが、5年間ずっとユーザーから聞かれ続けていた質問がありました。「USB-Cで外部ディスプレイに出力できるようになるのはいつですか?」というものです。開発チームは「できた時にできる」と回答し続けてきたのですが、ようやくその日が来たようです。

USB-Cディスプレイ出力の技術的な仕組み

Apple SiliconのUSB-CポートからDisplayPort信号を出力するには、4つの異なるハードウェアブロックが連携する必要があります。具体的には以下の4つですね。

  • DCP(Display Coprocessor): ディスプレイ制御プロセッサ
  • DPXBAR: DisplayPortクロスバースイッチ
  • ATCPHY: USB Type-C物理層コントローラ
  • ACE: USB-Cポートコントローラ

これらすべてをリバースエンジニアリングし、それぞれにLinuxドライバを書き、さらに4つが正しく連携するよう調整する必要がありました。開発者のSven氏、Janne氏、marcan氏が何年もかけて取り組んできた成果です。

2025年12月の39C3カンファレンスでは、Sven氏がM1 MacBook Airから会場のAVシステムにUSB-C to HDMIアダプタで接続してスライドを映すというデモを行いました。実際に動いている様子を見せたわけですね。

現時点での制約と注意点

とはいえ、まだ完全ではありません。現在の「fairydust」ブランチには以下のような制限があります。

  • 特定のUSB-Cポート1つだけがディスプレイ出力に対応(複数ディスプレイは未サポート)
  • ホットプラグ・コールドプラグ時に不安定な挙動が出ることがある
  • 一部のディスプレイで色味がおかしくなったり、解像度モードが正しく認識されないケースがある

そのため、このブランチは主に開発者向けの「as-is」提供となっています。一般ユーザー向けの正式サポートはもう少し先になりそうです。

M3チップ対応も進行中

もう一つの大きな進捗として、M3シリーズへの対応が加速しています。これまでm1n1ブートローダーでの基本サポートは存在していましたが、各マシン向けのDevicetreeやM3固有のハードウェア差異への対応が不足していました。

ここに3人の新しいコントリビューターが参加したことで、M3対応が大きく前進しているそうです。オープンソースプロジェクトらしい展開だなと感じました。

Asahi Linuxを試すには

Asahi Linuxは公式サイト(asahilinux.org)からインストーラーをダウンロードできます。M1/M2搭載Macをお持ちの方なら、macOSと共存する形でインストール可能です。

USB-Cディスプレイ出力を試したい場合は、fairydustブランチを自分でビルドする必要があります。カーネルのビルド経験がある方向けですね。

まとめ:5年間の積み重ねが形になった

Asahi Linuxの進捗を見ていると、オープンソースコミュニティの粘り強さに感心します。Appleが公式にはLinuxをサポートしていない中、完全なリバースエンジニアリングで4つのハードウェアブロックのドライバを書き上げるというのは途方もない作業です。

Apple Siliconの性能は魅力的だけれどmacOS以外のOSも使いたい、という方にとっては大きな一歩になったのではないでしょうか。M3サポートの進展も含め、今後の動向が楽しみなプロジェクトです。

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