AppleとSpotifyの対立がEU市場で激化しています。2024年3月、欧州委員会はAppleに約18.4億ユーロの制裁金を科しました。約2900億円に相当する巨額です。原因はApp Storeでの反競争的行為です。しかし、問題はそれだけにとどまりません。デジタル市場法(DMA)への対応をめぐっても激しい攻防が続いています。この問題の全貌を解説します。

AppleとSpotifyの価格表示問題の発端

この問題の核心はシンプルです。SpotifyがiOSアプリ内で価格を表示できなかったことです。Appleは長年、アプリ内から外部サイトへの誘導を禁止してきました。つまり、SpotifyはApple以外で安く契約できることをユーザーに伝えられなかったのです。

具体的には、Spotifyの月額料金はApp Store経由だと高くなります。なぜなら、Appleが最大30%の手数料を課すからです。しかし、Spotifyの公式サイトで直接契約すれば安くなります。ところが、アプリ内でこの情報を伝えることが禁じられていたのです。

欧州委員会の18.4億ユーロ制裁金の意味

2024年3月4日、欧州委員会がAppleに制裁金を科しました。額は18.4億ユーロです。Spotifyの2019年の申し立てが発端でした。調査の結果、Appleの行為は反競争的だと認定されました。つまり、Appleが市場支配力を乱用していたということです。

しかし、Appleはこの判断に強く反発しています。「Spotifyは手数料をほとんど支払っていない」と反論しました。実際、SpotifyはApp Store内で課金機能を使っていません。そのため、直接的な手数料は発生していないのです。さらに、Appleは「EUの判断が消費者に不利益をもたらす」とも主張しています。

デジタル市場法(DMA)がもたらす変化

この問題にさらに大きな変化をもたらしたのがDMAです。2024年3月から本格施行されました。DMAは大手テック企業を「ゲートキーパー」に指定します。Apple、Google、Meta、ByteDanceなどが対象です。そして、これらの企業に新たな義務を課しています。

具体的には、サードパーティの決済手段を許可する義務です。また、自社サービスの優遇的な扱いも禁止されます。さらに、ユーザーが他のアプリストアを使える環境も求められます。つまり、Appleの「囲い込み」ビジネスモデルに直接影響するのです。

しかし、AppleのDMA対応には批判が集中しました。たとえば、新たな手数料体系「コアテクノロジー料」の導入です。1インストールあたり0.50ユーロが課されます。しかも、従来の手数料と組み合わせると実質的に負担は変わりません。だからこそ、Spotifyは「DMAの精神に反する」と批判したのです。

Spotifyの価格表示をめぐる攻防

DMA施行後、Spotifyは価格情報を含むアプリ更新を提出しました。しかし、Appleはこの更新を却下しました。理由は「新たな手数料を支払わない限り価格表示は認めない」です。つまり、DMAの精神と矛盾する対応だったのです。

その後もSpotifyは再提出を続けています。また、欧州委員会への追加申し立ても行っています。このように、法律が変わっても実際の運用で対立が続いているのです。とはいえ、EUは監視を強化しています。さらなる制裁金の可能性も指摘されています。

アプリ経済の今後と日本への影響

この問題は世界中のアプリ市場に影響します。実際、日本でもApp Storeの手数料問題は注目されています。公正取引委員会も調査を行っています。特に中小のアプリ開発者にとって、手数料の負担は大きな問題です。

また、アメリカでもEpic GamesとAppleの裁判が話題になりました。世界各地で類似の規制が議論されています。したがって、AppleとSpotifyのEU紛争は氷山の一角に過ぎません。要するに、アプリストアの独占的な慣行が世界的に見直される時代が来ているのです。