コンサルティング業界にもAIの波が押し寄せている

「生成AIでコンサルタントの仕事がなくなる」──そんな極端な話がネット上を飛び交っていますが、現場の実態は少し違います。なくなるのではなく、やり方が変わるのです。

マッキンゼーやBCGといった大手ファームはすでに独自のAIツールを開発・導入し、調査や分析の生産性を大幅に引き上げています。中小のコンサルティング会社やフリーランスのコンサルタントにとっても、生成AIは「大手との差を埋める武器」になり得ます。

この記事では、コンサルティング業務のどこに生成AIが効くのか、具体的な活用場面と注意点を整理します。

調査・分析フェーズが劇的に速くなる

コンサルティングの仕事の大部分は「調べる」ことに費やされます。業界動向のリサーチ、競合分析、顧客インタビューの整理──これらの作業に生成AIを使うと、体感で3〜5倍の速度で進められます。

非構造化データの分析

コンサルタントが扱うデータの多くは、スプレッドシートの数字ではなく、会議の議事録、顧客の声、業界レポートの文章といった「非構造化データ」です。

従来はこれらを一つひとつ読んでエクセルにまとめていましたが、生成AIに投げれば数分で要約・分類・パターン抽出ができます。たとえば、100件の顧客インタビュー記録から「不満のトップ3」を抽出するような作業は、AIの得意分野です。

市場調査の効率化

特定の業界について調べるとき、以前は数日かけてレポートを読み込んでいた作業が、AIを使えば初期リサーチを数時間で終わらせられます。もちろんAIの出力をそのまま使うわけにはいきませんが、「調査の出発点」としては十分な品質です。

ここで大事なのは、AIの出力を鵜呑みにしないこと。数値データや引用元は必ず一次ソースで確認する習慣を持つべきです。

提案書の作成スピードと質が上がる

コンサルティングの成果物として最も重要なのが提案書です。ここでも生成AIは大きな力を発揮します。

ドラフト作成の自動化

過去の提案書をナレッジベースとしてAIに読み込ませ、新しい案件の情報を入力すると、提案書のドラフトを自動生成できます。ゼロから書くのと比べて、初稿の完成までの時間が半分以下になるケースが多いです。

Difyのようなノーコードツールを使えば、自社専用の提案書生成ワークフローを構築することも難しくありません。入力フォームにクライアント情報と課題を入れると、構成案とドラフトが出てくる仕組みです。

コストと効果の定量化

提案の説得力を高めるには、「この施策でどれくらいのコスト削減・売上向上が見込めるか」を数字で示す必要があります。AIを使えば、類似事例のデータを参照しながら、投資対効果のシミュレーションを素早く作成できます。

ただし、AIが出す数字はあくまで推計です。根拠を明確にし、前提条件を添えた上で提示することが信頼性を保つポイントになります。

クライアント対応の質が変わる

生成AIの活用は、クライアントとのコミュニケーションにも影響を与えています。

会議の事前準備

クライアントとの打ち合わせ前に、過去のやり取りや関連資料をAIに要約させ、論点を整理しておく。これだけで会議の生産性が大きく上がります。「前回何を話したか」を確認する時間がなくなるだけでも、かなりの効率化です。

議事録と次のアクション

会議の録音データをAIで文字起こし・要約し、決定事項とTODOリストを自動抽出する仕組みを作っているコンサルタントも増えています。WhisperやClaudeを組み合わせれば、比較的簡単に構築できます。

AI時代にコンサルタントに求められること

AIが調査や分析を代行してくれるようになると、コンサルタントの価値はどこに残るのでしょうか。

問いを立てる力

AIは「答え」を出すのは得意ですが、「何を聞くべきか」を考えるのは人間の仕事です。クライアントの本質的な課題を見抜き、適切な問いを設定する能力は、むしろAI時代においてこそ重要になります。

信頼関係の構築

コンサルティングは結局のところ「人と人」のビジネスです。AIがどれだけ優秀なレポートを作っても、クライアントの経営者が腹落ちしなければ実行に移されません。相手の立場に立って考え、丁寧にコミュニケーションを取る力は、AIには代替できない領域です。

AI活用そのもののコンサルティング

皮肉なことに、「AIをどう使えばいいかわからない」という相談が、コンサルタントへの新たな需要を生んでいます。AI導入の戦略立案、ツール選定、社内体制の整備──これらを支援する「AI活用コンサルティング」は、今最も成長している分野の一つです。

注意すべきリスク

AIの活用にはメリットが多い一方で、押さえておくべきリスクもあります。

  • 機密情報の取り扱い:クライアントの情報をクラウドAIに入力する際は、情報漏洩のリスクを必ず考慮する。社内ポリシーの整備やオンプレミスLLMの検討が必要
  • 品質管理:AIの出力を無検証で使うと、誤った情報がそのまま提案に紛れ込むリスクがある。人間によるレビューは必須
  • 過度な依存:AIに頼りすぎると、自分で考える力が衰える。AIは補助ツールであって、思考の代替ではない

まとめ

生成AIはコンサルティングの仕事を奪うのではなく、コンサルタントの能力を拡張してくれるツールです。調査・分析の効率化、提案書作成の高速化、クライアント対応の質向上──どの場面でも確実に生産性を上げてくれます。

一方で、AIを使いこなすには「何を聞くか」「どう検証するか」「クライアントにどう伝えるか」という人間側のスキルがこれまで以上に問われます。AIと人間、それぞれの強みを活かした協働が、これからのコンサルティングの標準になっていくでしょう。